「最近の若手は嫌がられること、ノーといわれることを怖がりすぎる」
営業現場でよく聞かれる愚痴である。住宅営業マンの菅野敏一君(写真右)も、ご多分に漏れずこのタイプ。住宅展示場まで足を運んでくれた客に、なかなか声をかけることができない。二の足を踏んでいるうちに、別のメーカーのモデルハウスへ去っていかれることもしばしばだとか。
福島県二本松市生まれの25歳。3年前に埼玉・群馬両県を営業エリアとするミサワホーム西関東に入社し、以来、営業一筋。絶対に人を騙したりすることはないと思わせる、誠実そのものといった風貌だ。
「苦手なタイプのお客様だと、ついつい声をかけそびれてしまうんです。お子さん連れの若いご夫婦とか話のきっかけを見つけやすい方だといいのですが、周囲に.近寄らないで.オーラを発している方とか、無言で腕組みしながらモデルハウスを見ていらっしゃるご高齢の方なんかは、どうお声がけしたらいいのかわからなくて……」
頼りない表情でこう話す。視線の先には、上司でさいたま店次長の五十嵐光一さん(写真左)の姿が……。
「たしかに最近は営業マンだけではなく、お客様の気質も様変わりしました。菅野のいうことにも一理はあるんですよ」と五十嵐さんは助け舟を出した。
見込み客の自宅へ昼夜を問わず通いつめ、家族全員の信頼をがっちりつかんでから家づくりの提案にとりかかる。これが従来の住宅営業の常識だった。しかし最近は「営業マンの訪問を嫌がるお客様が多く、契約を取り交わすまですべての商談を当社の展示場や営業所で済ませるケースが増えた」(五十嵐さん)。客に嫌われないよう、適度な距離感を保ちつつ接客しなければならないのだ。
とはいえ、せっかくの来場客を見逃してしまっていいのだろうか?
「いけません。商談に入っていくには、なんといっても初回の声がけが大事です。迷惑かもしれないから最初はそっと見守ってさしあげよう。そんな考え方があるのは承知しています。でも、綺麗ごとですね」
現場を束ねる営業所長時代には2度も販売件数第1位の栄誉に輝いたことがある五十嵐さんは、柔和な表情を崩さずにぴしりといい切った。根拠はある。