どこででも働け、生活できる時代に人はなぜ上京するのか。元号が令和になってから上京した人にその理由を尋ねるシリーズ「令和の上京」。第3回は、上京1カ月後にコロナ禍に見舞われ、うつを乗り越えたフリーカメラマンで会社員の藤村駿介さん(29)――。(取材・構成=ノンフィクションライター・山川徹)

(取材日:2025年2月19日)

藤村駿介さん
撮影=プレジデントオンライン編集部
藤村駿介さん

上京1カ月で緊急事態宣言に…

東京の三鷹市のアパートを借りたのは、2020年1月でした。その頃は、まだメディアも新型コロナの“コ”の字も言っていなかったですよね。中国の武漢で原因不明の風邪が流行りだしたと報じられていたくらい。

徐々に新型コロナが広まってきて「密閉」「密集」「密接」の三密が危ないとか言われはじめて……。ぼくが通っていた関西大学の大学院では卒業式が取りやめになり、修了証書を研究室に個別に受け取りに行きました。

3月11日に24歳で大阪府箕面市の実家を出て上京したのですが、その16日後の3月27日です。新型コロナ感染対策として、東京都が不要不急の外出自粛を呼びかけはじめたのは――。

店もほとんどが時短営業か、閉店していました。だから近所のどこにスーパーやご飯屋さんがあるのかわからない。せっかく暮らしはじめた新しい街に馴染む余裕もないまま、4月7日にはじめての緊急事態宣言が発出されました。

緊急事態宣言下で人のいない渋谷スクランブル交差点
写真=iStock.com/mina you
※写真はイメージです

そのときは、まさか自分がコロナ禍の影響で、うつ病になるなんて思いもしていませんでした。研究か写真か、大阪か東京か。悩んだ末に、フォトグラファーを目指して、これから東京でがんばっていくぞ、というタイミングだったので……。