飲食店で繰り返される集団食中毒
最近、飲食店での食中毒のニュースが目に付く。厚生労働省の「令和7年食中毒発生事例(速報)」によると、2025年1月から3月5日までの間に64件の食中毒事例が発生。うち39件が飲食店で発生している。24年は1038件、うち548件が飲食店だった(速報値)。
2023年以前は確定値がまとまっている。飲食店での事例は、23年は489件、22年は380件、21年は283件、20年は375件、19年は580件と推移してきた。21年以降、再び増加する傾向がみられる。
食中毒は高温になる夏に起こりやすいと思っている人は多いだろう。しかし、この冬も飲食店で発生した食中毒のニュースを多く耳にしたし、ノロウイルスなどのウイルスが原因ということもよく聞く。どういうことだろうか。
農水省のホームページによると、ノロウイルスによる食中毒は11月~3月の寒い時期がもっとも流行しやすく、そのほとんどがノロウイルスに汚染された食品を食べることによるものだという。特に生の牡蠣などの貝類や洗浄されていない野菜・果物などに付着していることがある。温度が低くても比較的長期間生存することができ、空気中のウイルス粒子を吸い込むことで感染するリスクもある。
厄介なのは、非常に感染力が強く、感染者の嘔吐物や便からウイルスが広がることだ。感染者が調理をすることでウイルスが食品や調理器具に付着し、他の人に感染することがある。ドアノブや手すり、トイレなどを触った手で口に触れることでも感染する。感染すると通常は24~48時間ほどで症状が現れ、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛などを引き起こす。
感染防止には「手洗い」が不可欠だが…
感染を防ぐためには、手洗いなど食品の衛生管理が非常に重要だ。しかし、最近、飲食店での衛生管理に不安を覚えることが何度もあった。大規模な店舗や宿泊施設の厨房などはうかがいしれないが、ファストフード店での経験例を紹介しよう。
2025年2月、筆者が都内のファストフード店を訪れた時のことだ。その店は注文したサンドイッチを選ぶと店員がパンにハムや野菜、調味料などの具材を順々に入れて最後にレジで会計をする。店員はビニールの手袋をして食材を扱っていた。
それはよいのだが、問題はそのあとにある。