「画像解析×イチゴ」に絞り込んだ理由
起業後の数年間は、強みである画像解析の技術を生かして何ができるのか、トライアル&エラーの連続だったという。
「漠然と、自分たちだけではなく生産者の収益も上がるような事業がしたいと考えていました。そのために、生産者が直接販売できるECサイトを作ったり、画像解析技術を使って野菜の収穫時期を読み取る事業を考えたり。日々の糧を得るために、画像解析の受託業務も数多く担当しました」
「事業の方向性を明確に定めるまでは、外部からの資金調達をしたくない」と考えていた野秋さん。大学院では、画像解析技術を応用すれば、農作物の品種改良の期間短縮につながるところまでは研究していた。しかし、それだけでは生産者の収益向上には至らないのだ。
「誰かに画像解析の技術を売るのではなく、その技術を用いて自分たちで品種改良を行い、生産や流通などのプロセスにも入り込まないと、生産者の収益向上には貢献できないのです。ではどんなビジネスモデルがいいのか。文献をあたるうちに、理想の姿に出会いました」
それは、キウイで知られる「ゼスプリ」。ニュージーランドの生産者協同組合として始まったゼスプリは、キウイの品種改良にとどまらず、生産から流通、マーケティングまでも担っていた。
ゼスプリを手本とした、CULTAのビジネスモデルはこうだ。画像解析とゲノム解析を用いて品種改良を高速で行い、改良された品種の苗を生産者に委託する。できた農作物はCULTAが原則全量買い取って、提携する物流会社が輸送し、卸会社に販売される。卸会社から、スーパーや飲食業といった小売店を経て消費者に届く仕組みである。
「品種改良の方法は、農作物によって大きく異なります。単価が高くて市場の成長が見込め、品種改良も早くできるという点において、チャレンジする農作物をイチゴに絞り込みました」