赤字覚悟でも開発会社を支える
さらにKDDIの強さを支える重要なサービスが、12年3月からスタートした「auスマートパス」だ。これは月額390円で500以上のアプリを自由に利用できるというもので、開始から約1年で500万契約を超えている。
スマホは自由にアプリを選べる点が魅力だが、その種類は数十万にのぼり、初心者には敷居が高い。また購入しなければ試すことができず、使い比べるのが難しい。一方、スマートパスであれば、KDDIの選んだ人気アプリが使い放題のため、初心者でも安心して楽しめる。
またこのサービスは開発会社にもメリットがある。有料アプリは競争が激しく、なかなか利益に結びつかない。だがスマートパスでは利用者の数に応じて利用料が支払われる仕組みのため、ユーザーは手軽に試すことができ、開発会社は実力にあった収益が得られる。開発会社からは「アプリでようやく儲かるようになった」という声が聞かれる。
KDDIはスマートパスの参入会社に利益が出るように赤字覚悟で投資を重ねてきた。初期投資の回収には「400万契約が必要」(高橋誠専務)といわれていたが、すでに500万契約を超えており、現在は無料で提供されているiPhone向けサービスも5月から課金が始まるため、これからは利益貢献が期待できる。
なぜ赤字のリスクをとってまで開発会社をサポートするのか。それは先進的な企業との提携が、KDDIの成長を後押ししてきた歴史があるからだ。
KDDIは06年7月にソーシャルゲーム大手のグリーに出資している。当時のグリーの事業は現在とは異なるが、結果としてグリーの成長は携帯電話の利用を後押しすることになった。ほかにもIP電話のスカイプやSNS大手のフェイスブック、「LINE」を提供するNHNジャパン(現LINE)との提携など、常に業界の話題を集めてきた。高橋専務は「提携は利益面での貢献はほとんどないが、ユーザーの満足度を高めるうえでは、お互いにプラスになる」と話す。