外面は良いのに家庭では不機嫌な「オレサマ亭主」

オレサマはさまざまな場面や人間関係の中に存在するし、年齢も性別もまちまちですが、いくつかの共通点があります。自分の権利や領域にこだわって、そこが少しでも侵されると感じると急激にオレサマ化してしまうのです。それ以外のときはとくに威張っているわけでもないし、周囲に対して攻撃的なわけでもありません。

「こうしたい」とか「こうありたい」という目標や願望よりも、「これはイヤ」とか「ここは譲れない」という、はっきり言えばどうでもいいこと、些事にこだわります。

もちろん本人にとっては些事ではありません。その部分を侵されてしまうと自分の権利や相手に対する優位性が失われてしまうのですから大事なことになってきます。

たとえば職場や近所には笑顔を見せても、家の中で妻と向き合っているときは不機嫌な顔ばかり見せている「オレサマ亭主」で考えてみましょう。

こういうタイプの男性にとって、「オレが食わしてやっている」「オレは外で苦労している」というのは絶対に譲れない一線です。だから妻にどんなに毎日の食事を作ってもらっても家事一切をやってもらっても、家庭内での自分の優位性は動かないし、大事にされることも自分の好みや都合が優先されることも当然だと思い込んでいます。

「外で苦労しているんだから、家の中では思い通りにさせてもらう」というのは、本人にとっては当然の権利なのでしょう。

夫は妻を責める
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譲った物言いをすると自分の優位性が揺らぐと思っている

すると、思い通りにいかないことがあると怒ります。好みの茶碗を勝手に替えられたとか、食事のときの皿の並べ方が気に入らないとか、些細なことで途端に機嫌が悪くなったりします。自分が仕切られている気がするのでしょう。

「家の中では誰にも遠慮なく暮らしたい」とか「気分よく過ごしたい」と願うのでしたら、せめて妻とはお互い機嫌よく、干渉し合わないで暮らしたいと考えてもいいはずです。そうすれば逆に「細かいことで腹を立てない」とか「お互いの領分を尊重する」という答えだって出てくるはずです。

ところがそういう発想はまったく出てきません。うっかり妻が「皿の並べ方ぐらいでうるさいな」と愚痴を漏らせば、逆上しかねません。

「メシのまずいのは我慢してるんだ。皿ぐらいちゃんと並べろ!」とにかくオレサマ亭主は一歩も引きません。妻が少しでも反撃してくれば徹底的な攻撃を仕掛けてきます。少しは相手を立て、一歩譲って……という柔軟さがまったくありません。

たとえば「皿の並びが悪いとせっかくの料理が台無しじゃないか」といった少しは柔らかい物言いなど思いつきもしないのです。それを言ってしまうと、家庭内での妻に対する圧倒的な自分の優位性(と思い込んでいるもの)が揺らいでしまうからです。