過保護にすることが祖父母の喜びだった

私の家には男の子が3人います。もうとうにみんな大人になって自立していますが、私たち夫婦は、長男が生まれる前に私の両親を招いて同居することにしました。子どもたちは3人とも、生まれてみたら両親もいるし祖父母もいる、という家庭で育ちました。

祖父母というのはとにかく孫から目を離さない。もちろん親もあるていどはそうしているわけですが、祖父母はそれ以上に目も心も離しません。孫が喜ぶことをしてやることこそ、祖父母にとっては最大の喜びでした。

これはもちろんある種の過保護です。ときにはしつけとしては望ましくないようなことでも「孫が喜ぶから」とやってあげる。けれどそれが同時に自分の喜びなのです。毎日、これが「喜びを分かち合う」ことの原形なのだな、と思うような場面ばかりでした。

高校生への調査で分かった「問題行動の原因」

ちょっと興味深い研究をご紹介します。

京都大学大学院の木原雅子先生という方の研究です。木原先生は長年にわたって数十万人の青少年を対象にした調査を行い、子どもたちがいま抱えている問題の根がどこにあるのかを知ろうとしておられます。いじめ、性の問題、万引きや自傷行為といった問題点の原因はなんなのかを知ることによって、予防することを目的とした調査研究です。

木原先生は毎年全国各地の高校を訪問して、調査を行っておられますが、そのなかにこんな質問がありました。

「あなたは自分の親から大事に育てられてきたと思いますか」「いまあなたを大切にしてくれる大人はいますか」。こうした多くの問いに、「はい」か「いいえ」で答えていくというアンケート調査です。

質問項目は数多く「異性の好きな友達ができたら、高校時代に性的な関係を持つことはかまわないと思いますか」「すでに異性と性的な関係を持った経験がありますか」「万引きをした経験がありますか」といったことにも質問は及びます。

すると、はっきりした傾向が見えました。

「自分は親に大切に育てられたと思うか」
「自分を大切にしてくれる大人がいるか」

という問いに「はい」と答えたグループ、「いいえ」と答えたグループで、他の質問に対する答えが大きく違ってきたのです。