覚えている人=自己肯定感の強い人
設問はたくさんあります。後半には「あなたには自尊心がありますか」「自己肯定感はありますか」「あなたはなにか夢を持っていますか」「将来に対する希望がありますか」「自分を創造性豊かな人間だと思いますか」といった項目がならんでいる。
この集計結果は、驚くべきものでした。日本人も中国人も、その回答のパターンはほとんど同じでした。
「お母さんのにおいを覚えている」と答えた学生は、自尊心が高く、自己肯定感も強い。同時に夢や希望を持っていると答えている場合が多く、自分自身を意欲的で創造性も豊かだと思う、と感じていました。
本当に母親のにおいの記憶があるのかどうかは、なんともいえません。けれど「覚えている」と感じている人が、自己肯定感などを強く持っているということなのですね。
この傾向は、日本も中国も変わりません。
自尊心も夢も持てない日本の大学生
しかし、この調査で私が日本人としてとても悲しく思ったのは、「母親のにおいを覚えている」と答えた日本人が、中国人に比べて決定的に少なかったことです。同時に「自己肯定感がある」「夢がある」「自尊心がある」と答えた人も少なかった。
母親のにおいの記憶や添い寝経験の有無は、あきらかに、大学生の自尊心などの持ち方に関連があるということです。どんなにおいなのか、どのくらい添い寝をしたらどうなるのか、といったことはわかりません。ほかにも調査項目以外の要素もあるかもしれません。
けれど、この結果は注目に値するものだと思います。とても大きな意味を持った調査だと感じました。
いま日本の大学生はいっしょうけんめい就職活動をして、やっと就職してもじきに辞めてしまう人が多いようです。自尊心が持てない、組織内でうまくやっていけない、プレッシャーが大きい、などさまざまな理由はあると思います。終身雇用制がくずれ、不況による新卒採用の枠が減るなどして、いまの大学生はとても大変だとは思います。
けれど、会社をじきに辞めてしまう若者の多くが、辞めた理由として社内の人間関係をあげています。人間関係がうまくいかずに、結果的に夢や希望、自己肯定感を感じられずに自尊心をも失ってしまう。