不登校から半年後、子の多くが考えること

様々なケースがあり一様ではないが、植木さんによると、子どもが学校に行けなくなって最初の3カ月ぐらいは「急性期」といって、子どもは心身ともに不安定な状態であることが多いという。

その間に親子間のバトルが起きることもあるが、半年ぐらい経つとその生活に慣れていく。そして子どもは、安心できる家の中で落ち着いてくる「充電期」に入るという。

机に突っ伏している男子生徒
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この「充電期」にエネルギーが溜まってくると、「そろそろ何か動こうかな」と考える子が多くなり、次の居場所を具体的に検討する家庭が増えるという。

今は民間が運営するフリースクールや自治体が運営する適応指導教室(教育支援センター)など、不登校支援の場所も増えているので、それを利用するのも一つの手だ。もちろん、学校に不登校になった生徒のための居場所があるのであれば、それを利用するのもいいだろう。

行きたいけどいけない子と学校をつなげる「チャレンジクラス」

そんななか、東京都では、2024年度から休みが長期化した生徒への支援として、1学年1クラス編成の「チャレンジクラス」(東京型不登校特例校/校内分教室)の設置を一部の学校で始めた。これは東京都独自の取り組みであり、現在都内の公立中学校には10校が設置されている。

チャレンジクラスがあれば、学校に行きたいが教室に入れない不登校生徒が転校することなく、もともと通っていた学校にそのまま通うことがかなう。一般の生徒も同じ中学校の校舎内で勉強している環境で、時間割に沿った授業を教員から受けられるのだ。これは、不登校の児童・生徒のみを対象にした一般的な「不登校特例校」との大きな違いだろう。

学校側としてもチャレンジクラスの教員と一般クラスの教員の連携が取りやすい、校内の既存の施設を使用する取り組みのため、大きな経費負担にならないなどのメリットがあるようだ。

チャレンジクラス設置校のひとつ、杉並区立高井戸中学校の高津憲校長に話を聞いた。

「もともと当校では、不登校の生徒のために『チャレンジルーム』という一室をつくっていました。『学校に行きたいけれど、教室まで足が向かない』という子のための教室です。3学年が一緒の自習室のような場で、手が空いた先生が勉強を見るようにしたり、地域の方にも見守りを頼んだり、といった対応をしてきました。その後、東京都からの要請で我が校にチャレンジクラスを設置することが決まりました。今は『チャレンジルーム』の他に、各学年に1クラスずつ、チャレンジクラスも設けています」

チャレンジクラスに通う生徒の、一日の流れも聞いた。

「登校時間は午前9時半、下校時間は午後2時30分です。1日4時間のゆとりあるカリキュラムを組んでいます。登校後の10分間は『リフレッシュタイム』として、軽い運動などをします。学習内容は通常クラスの年間指導計画に基づいていますが、コマ数が少ないので、当然、全てを網羅することはできません。ただし、少人数授業の特性を活かして学習内容を厳選したり、個別学習の時間を活用したりして柔軟に教えています。希望する生徒には、通常学級と同じ定期考査も行なっています」

また、高津校長は「都内でもこのクラスを設置している学校は限られるなか、通いたいけれど地理的な問題で通学ができない、という声を聞きます。しかし、今後拡大していく可能性はあるでしょう」と語る。