守秘義務に配慮すると、体験の3分の1くらいしか話せない
――終了後、経験を話す機会はありましたか。
【伊藤】裁判員ネットワークの集まりや、裁判員ラウンジ、大学の講義や若い学生の前で話すことができました。
ただ学生から質問があっても、守秘義務に配慮すると3分の1くらいしか答えられなかったので、せっかくの機会に話せない、聞いてもらえない不合理を痛感し続けました。周囲は気をつかってあまり経験については聞いてくれません。ありがたい部分もありますが、少し物足りないですね。
――守秘義務で話せないことが多い点に、非常にご不満を抱いているように感じられました。
【伊藤】守秘義務は緩和すべきです。一般市民に一生口外してはいけない、という義務を負わせるなんて重すぎるし、内容の緩和と同時に期限も設けるべきだと思います。
――裁判員の心理的な負担の解消についてはどうお考えですか。
【伊藤】こころの負担はカウンセリングや電話相談ができるので、今でも問題ないかもと思います。
――改善策の提案をされる経験者の方もよくいらっしゃいます。
【伊藤】経費が特別にかからないのであれば、さらに工夫するのも良いかと思います。自分の場合は辛くても弱みを見せたくなかったので、相談しようとはしなかったですが、相談をしたほうが良いケースもあるかもしれません。
裁判員の経験から「自分と違う意見」を理解しようとするように
――裁判員を経験したことによる変化、社会の見方が変わった、などはありましたか。
【伊藤】はい、変わりました。自分と違う意見があっても理解しようとするようになりました。
被告人の考え方はまったく理解できなかったですが、それでも公平に判断するために理解しようとはして、全体の判断をしました。
――具体的になにか活動をされていますか。
【伊藤】ブログの執筆と、必要があれば取材を受けています。
――また裁判員に選ばれたら引き受けますか。引き受ける場合、改善しておいてほしいことなどはありますか。
【伊藤】引き受けます。改善してほしいことは、
・選任手続きはオンラインで済ませ、選ばれた人だけを呼ぶシステムにしてほしい
・多くの人が裁判員になりやすいよう、もっと周囲の理解を得られるようにしてほしい
の2点です。
――次に裁判員になる人にメッセージをお願いします。
【伊藤】気楽に受けてください。法のド素人でも理解できる準備が整っています。確かに辛いこともあるけれど、あなたが選ばれたのには意味があると思って乗り越えてほしいです。