ホストの暴行・強制性交事件を担当した伊藤さんの体験談

裁判員経験者:伊藤さん
陶芸からバンジージャンプまで、あらゆるレジャーを体験する「プロの遊び人」。裁判員をつとめた当時は30歳代だった。

――はじめにあなたが担当した事件についてお聞かせください。

【伊藤】元ホストによる連続婦女暴行事件、強制わいせつ・強制性交等致傷等の事件です。争点はいくつかあり、

・女性Bが何百発もなぐられたと主張。しかし被告人はそれを否定している
・女性Dは殴られたか
・被害者の女性は自ら被告人宅へ上がっているが、それは被害者の落ち度か

でした。

玄関を開ける若い女性
写真=iStock.com/maroke
※写真はイメージです

――名簿記載通知が届いたとき、選任手続きのときはどのように感じましたか。

【伊藤】最高裁から届いた通知には驚きましたが、当たらないと思っていました。地裁から呼出状が来たときは訴えられたかと思い、父も目の前で開けろと言ったのですが、裁判員選任手続きの連絡でした。

――裁判員に選ばれたときの感想を教えてください。

【伊藤】やる気は誰よりもありましたし、使命感もありました。半ばブラックボックス化している裁判員裁判という世界を覗いてみたかったのと、裁判員になって被告人を裁定するということに社会的意義を感じたからです。ためらいはまったくなかったですね。

被害者女性の話を何回も聞いているうちに、辛くなった

――とても前向きな気持ちだったということですね。

【伊藤】ただ、それは裁判員を経験していくなかで変わりました。公判の途中、被害者女性の話を何回も聞いているうちに、軽い気持ちで裁判員になったことを後悔しました。事件が起きた以上、悲しい思いをした被害者がいることはわかっていたはずなのに、そのことを考慮していなかった自分の浅はかさを悔やみましたね。心が痛んだんです。被害者の証言を続けて聞くだけでも辛かったのですが、軽い気持ちで裁判員になったことへの後悔もあって、ストレスが強かったです。

――裁判員制度に関する知識はお持ちだったのでしょうか。

【伊藤】なにも知らなかったです。アメリカの法廷ドラマは見ていましたが、日本でどうなっているかは知らなかったですね。ただ、自分の事件では弁護人が公判初日で被告人の有罪を認めていました。

――裁判員経験者の話を聞いたことはありましたか。

【伊藤】聞いたことはないです。

――審理のようすを教えてください。

【伊藤】審理は8日、評議が3日で公判開始から判決までのべ18日でした。

審理は問題なく理解できました。判断資料も高校生にわかるレベルで作られていたと思います。