「ブラックボックス化した裁判員裁判」を見てみたら…
――審理で印象的なことは何かありましたか。
【伊藤】裁判官たちがよく笑いよくしゃべり、とても人間味のある人たちであることが印象的でした。最初は裁判員たちは番号で呼ばれていたのですが、裁判長が長い期間一緒にやっていくので自己紹介しておきましょう、といって、名前や職業も簡単に話し合ったのは良かったと思います。ブラックボックスになっていた裁判というしくみを身近に感じられましたし、司法が健全に機能していることに安心しましたね。
課題と感じたのは、平日の昼間に選任手続きを行うこと、また事件によっては3週間も予定を開けなければならず、働き盛りの人は到底参加できないため、その結果によって裁判員の年齢などに偏りが出る恐れがあります。そもそも裁判で会社を休める人が少ないことも問題だと思います。
――評議についてはいかがでしたか。
【伊藤】裁判員の構成としては男性が2名であとは女性でした。年齢は30代から70代までとばらついていました。
私は誰よりも意見を言えたと自負できます。ただその内容はなにも言えないのがつらいですし、張り合いがないです。
裁判員は良く発言する人も余り話さない人もいましたが、裁判官はどの人にもなにか発言してもらうように努めていました。それでも最初から最後まで意見を言わない人もいて、なんのために来ているのか疑問に思いました。
――裁判長の進行はどうでしたか。
【伊藤】とても良かったです。裁判員を主役に据えてくれて、まずは裁判員たちで話を進め、必要なら裁判官がサポートするという、進行でした。
被告のホストへの求刑は懲役12~14年、判決は懲役9年
――ご不満に思われたことはありますか。
【伊藤】不満点は評議の内容を一切口外できないことです。
――裁判の結果を簡単に教えてください。
【伊藤】検察官の求刑は懲役12年から14年、弁護人は懲役3年で執行猶予という意見でした。判決は懲役9年になりました。
――裁判を終えての感想はいかがでしたか。
【伊藤】社会的に意義のあることを行ったという充足感がありましたね。ただやはり評議の内容を口外できないため、巷にあふれる裁判員の感想は「意義のある活動だった」「審理はわかりやすかった」「裁判官が親切だった」の3つしか聞けないのが不満です。
裁判員として参加して、一番市民の役割が期待されているところで熱心に役割を果たしたのに、その内容を一切言えないのはとても不満に思います。