「最悪の事態」は何が起こるかわからない

その前に1つアドバイスをするならば、現場の人たちにも視聴者を一番に考えてほしい。まずは大切な視聴者に対して「いい会社に生まれ変わり、これまでにない素晴らしい番組を提供する」と理解を求めたうえで、ストライキから始めるべきだと考える。

ストライキだけでなく、何らかのアクションを起こす時は「子どもがいじめられている」「会社名を言うのが恥ずかしい」「納得できない」と主張する前に、視聴者への意識を絶対に忘れないでいただきたい。

もし現場による革命が失敗に終わってしまったら、一体どうなるのか。おそらく総務省が出てくる案件になるだろう。テレビ局は放送の免許をもらって運営しているので、仮に免許を返納するにしても一朝一夕には絶対にできない。自分たちで改善できない場合は、国が介入に動き出す可能性があると考えていい。

最悪の事態になれば、身売りも考えられる。他局のものになるのか、他局とチャンネルを共有することになるのか、はたまた放送免許停止になるのか。現時点では何が起こるのか本当にわからない。

何度も言うが、社員が立ち上がるのが最後のチャンス。現場の社員のみなさんは、フジテレビ愛にあふれていると感じる。自分の会社を愛するのは素晴らしいことで、それが革命の大きなパワーになるだろう。

「膿」を出すには、人の入れ替わりしかない

しかし、これではまだ溜まった膿を出し切れるとはいえない。フジテレビが経営体制を一新し、信頼を回復するにはどうしたらいいのだろうか。それはやはり、人が入れ替わるということに尽きる。

それには2つの選択肢がある。1つ目が、現場の若手の中から強いリーダーシップを持つ人が経営に携わるケースだ。膿を出し切るという意味では、半分は日枝氏を引きずり下ろすことで達成し、半分はそこから組織を再構築することで達成する。ただし膿を出して、そのまま終わりではダメ。日枝氏に代わる人たちが出てきて、そしてまたその下の人たちが育っていかないと意味がない。

それには野球の大谷選手のようなスーパースター、あるいはそれに準ずるリーダーシップを取れる人が必要となる。どんな時代であれ、どのジャンルであれ、偉大なリーダーが新たな道へと組織を導いてきた。ここで伝えたいのは、必ずしも最初から大谷選手である必要はなく、やがて大谷選手になればいいということ。むしろ新しいトップとなる人材は「この人知ってる!」ではなく「この人誰だろう?」という段階からスタートしてもいいと考えている。

2つ目が、経営陣を総入れ替えするケース。メディアではないところから経営陣を召喚し、社内に外の血を取り入れるのだ。

理想は、メディアに精通している人。メディアの人たちと普段から仕事をともにしている、例えば一般企業のベテラン宣伝広報担当者あたりが適任だと考える。メディアのことを何も知らない人が来た場合、現場の人たちから反発が生まれる可能性があるからだ。

膿を出し切らなければ、フジテレビ再生への道はない。現場で働く社員が、最後の希望だ。

撮影=石塚雅人
フジテレビ本社屋(2025年1月27日)=東京・台場

一方で、週刊文春が訂正したからといって、中居氏のトラブルにフジテレビ社員が関わっていたかどうかは、いまだ確実な情報がない。今は報道する側も受け手側も過熱気味になっており、憶測で情報を発信することはより混乱を増幅させてしまうだろう。まずは、3月末に報告される第三者委員会の調査結果を沈着冷静に待つことが強く求められる。