「寝る間を惜しんで勉強したい」気持ちもわかる

映画やドラマの世界ではよく、「寝る間も惜しんで勉強をする受験生」が描かれます。そのため、「勉強を頑張る=睡眠時間を削る」というようなイメージを抱いてしまい、夜遅くまで勉強する子供に対して、「偉いね」「頑張ってるね」と声をかけてしまう親御さんもいるかもしれません。

裏を返せば、受験直前にもかかわらず、1日に8時間も10時間も寝ている受験生がいたら、「勉強しなくて大丈夫なのか」と思って不安になってしまう受験生や親御さんもいると思います。過去には、私が指導していた受験生の保護者の方から「うちの子は毎日22時には寝ているんですけど、本当に大丈夫なんですか? 受験生って『もっと勉強しなきゃ』って焦るくらいが普通だと思うんですけど」と相談されたこともありました。感情論としては、私も共感します。しかし、理屈としては真逆のことが成り立ちます。現実には、

①睡眠時間をしっかり確保するから
②脳が十分に機能するようになり
③テストの成績が向上していく

というサイクルが働きます。結果として、テストの成績が向上すれば、その分、受験に対する不安も少しずつ軽減されて、睡眠をたっぷりとれるようになります。すると、さらに脳が機能するようになり、好循環が生まれていくのです。

勉強する子供
写真=iStock.com/Pra-chid
※写真はイメージです

「24時以降の勉強」は絶対やめて

実際、私の周りの東大生も、睡眠時間はたっぷりとっていたという人が多いです。私自身も睡眠時間を削って勉強していた頃は、「成績が良いから、たくさん寝れるのだろう」と思い込んでいました。しかし、今はむしろ逆で「たくさん寝るから、成績が良くなる」という説明の方が正しいと自分の経験を通じて実感します。(もちろん、勉強あっての睡眠ですよ)

そのため、私が東大受験生などに勉強習慣を指導する際には、必ずと言って良いほど「24時以降には勉強するな」ということを伝えています。一生懸命勉強しようとする真面目で勤勉な受験生ほど、睡眠時間を削りたがるものです。そのため、苦しい気持ちもありますが、頑張り屋な受験生にこそ、心を鬼にして「勉強するな!」というメッセージを伝える必要があるのです。

自分の夢に向かって一生懸命努力する、睡眠時間を削ってまでも勉強を頑張る受験生には、ぜひその頑張りが報われて欲しいと願っています。

しかし、努力する方向を間違えれば、最悪の結果を招いてしまうことがあります。では、その努力はどこに向けたら良いのでしょうか。本当に減らすべき時間は睡眠時間ではなく、他のところにあります。それは、「無駄に使っている隙間時間」です。睡眠時間を削る代わりに、次のような時間を有効的に使うのです。