メジャーの打者で重要な数値

鈴木のOPSは1年目の2022年は.770、23年は.842、24年は.848。OPS.848は、2024年のナ・リーグ、規定打席以上では9位になる(1位は大谷翔平の1.066)。

鈴木誠也は同い年の大谷翔平ほどではないが、MLBに来てから少しずつ進化しているのだ。

それを象徴する数字がある。

MLBの公式戦では、投球速度、回転数、変化量、打球速度、飛距離などの数値がすべて「ホークアイ」を基幹とするトラッキングシステムで捕捉されて、MLB公式サイトの「スタットキャスト」というコーナーで公表されている。

打者の場合、最も重視されるのは「Exit Velocity(打球の初速)」だ。「フライボール革命」後のMLBでは、打球速度が時速158キロ以上、打球角度が26度~30度(バレルゾーン)で上がった打球が最もヒットやホームランになりやすいとされる。前提となるのが打球速度であり、それを端的に表しているのが初速なのだ。

スタットキャストで公開されている2024年の「打球の初速ランキング」5傑は図表3のようになっている。

【図表3】メジャーリーグ2024年の「打球の初速ランキング」
計測可能な打球が100以上の打者405人の中での順位。MLB公式サイトの数値をもとに筆者作成

ナ・リーグの本塁打王、大谷は405人中の3位、ア・リーグの本塁打王、ヤンキースのアーロン・ジャッジは6位。ともにトップクラスにいる。

2人と同じくらいの打球速度で、本塁打数が少ない打者もいるが、それはバレルゾーンにボールを飛ばす技術がない、または打席数が少ないからだ。とにかく、打球速度が遅ければ「お話にならない」のだ。

だから吉田は厳しいと判断される

大谷翔平の打球の初速は、MLB初年度の2018年が時速183.3キロで390人中54位、19年は185.23キロで406人中27位、20年は180.08キロで194人中50位だった。全選手中の上位ではあるがトップクラスとは言えなかった。

しかし2021年に191.51キロで404人中4位と急上昇。本塁打46本でリーグ2位となりMVPを獲得。22年は191.67キロで411人中3位。23年は190.86キロで408人中5位、44本塁打で本塁打王、2回目のMVPを獲得した。

そして24年は191.83キロで405人中3位。54本塁打で2年連続で本塁打王、3回目のMVPを獲得した。

大谷翔平は、2020年オフに先進の機器を備えたトレーニング施設「ドライブライン」に行って自身の投打の改造を始めたとされるが、その翌年から打球速度が急上昇し、リーグトップクラスの打者になったわけだ。

ちなみに吉田正尚は23年が180.72キロで408人中116位、24年は178.79キロで405人中154位と、むしろ2年目で打球速度は下落している。球団側もこの数字を把握しているから、吉田は「厳しい」という判断になっているのだ。