「私立の小学校に行くなら月に10万円以上。中学からでも、塾に行かせるだけで年100万円前後かかります」
妻が真剣にお受験を考えているか、高橋さんにはまったくわからない。
「妻は芸術大学出身だから、同じところに行かせたいのかなあ。劇団に入れたいとは言っていましたが……」
本気で芸大に入れるなら、有名な先生のレッスンは1回3万円ぐらいかかるという。もし子供にそれで食べていくくらいの才能があったりしたら……その投資金額はさらに膨れあがるはずだ。
「36歳ということは定年まで23~24年。手取りで1000万円の年収がそのままと仮定すれば、退職金を入れて、だいたい2億5000万円稼げます。しかし現在、月60万円で生活なさっているので、同じ生活を続けるなら、80歳までには3億円以上かかります。年金が5000万円もらえるとしても収支トントン。少しでも年金額が低いと破綻するでしょう」
淡々と語られる老後のリアルなストーリーに高橋さんの顔がだんだんと曇っていく。
「実は、昨今の不況の影響で、給与体系も真綿で首を絞められるようにジワジワと締め付けられています。退職金だってどうなるか……」
最後に花輪さんから、さらに無理なく貯めるための現実的なアドバイスがされた。
「今、まだ余裕があるうちに、財形貯蓄や給与天引きの定期預金などで、自然に貯まるようにするのが一番でしょう。月5万円天引きで貯金すれば、60歳で1500万円は貯まりますよ」
家庭に波風を立てず、無理な節約もせず、1500万円も貯まるのである。
【FPからの処方箋】妻に生活費を現金で渡す
(ファイナンシャルプランナー 花輪陽子=家計診断 澁谷高晴=撮影)