「小さな戦い」を乗り越えた先に安寧がある

結婚は、したときから長い交渉が始まる。「感覚のすり合わせ」と言ったらいいのだろうか。ふたりの生活をどう送っていくかは、小さなすり合わせを重ねて決めごとを設けていくことによって、徐々にスタイルが決まっていく。

それは日々のちょっとした戦いでもある。そういう戦いの末にいつのまにか、ふたりにとって居心地のいい「あ、うん」の呼吸が生まれるのではないだろうか。

だから、すり合わせのための小さな戦いの間に疲れてしまったり、めんどうくさくなってしまったりしたらいけない。そのあとに、安寧の時代がやってくるのだから。

もうひとつ大事なのは、「やってもらって当たり前」と思うことなく、常々感謝の思いを伝えることだ。

三回目にしてようやくわかったことが、こんなふうにいくらかはある。ただ、それでもまだなお、自分には言葉が足りないと思うときがある。

とはいえ、まだまだ修行中の身である

概して男というものは、女性に対して十分な言葉を尽くさないところがある。とくに僕は、やせ我慢をするタイプときているから厄介だ。家に帰っても仕事の話はほとんどしないし、たとえ外で嫌なことがあったとしても、今の若い人と違って、奥さんにいろんなことを逐一話す、ということがない。

堺正章『最高の二番手 僕がずっと大切にしてきたこと』(飛鳥新社)
堺正章『最高の二番手 僕がずっと大切にしてきたこと』(飛鳥新社)

自分に近い人に弱いところを見せるのが苦手なのだ。悩みを家族に吐き出したところで解決しないだろうし、愚痴を言って巻き込む方がつらいから、ネガティブなことは共有しないようにしている。話しただけで楽になる、とはとても思えないのだ。

そんなドライな僕は、できれば言わずに察してほしいといったタイプだ。だから、何を考えているかわからないときもきっと多々あるんじゃないだろうか。子どものときから、思ったことを心の奥底にしまうような癖がついているのだ。いちいち細かい話をするのは素敵じゃない、と思ってしまう。

そうは言っても、口にしなければ思いはきっと伝わらないということはわかっている。

それも含めて、僕はまだまだ修行中の身なのだ。

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