小学生もわかる! 円周率が3より大きい理由
【西成先生】昔、東大入試で「円周率が3.05より大きいことを証明せよ」という問題がでたことがあるんですけど、「円周率は3より大きい」という説明なら小学生でも理解できます。
【郷さん】それは知りたいです。
【西成先生】1辺が0.5の正三角形を図表2のように6つ並べます。すると正六角形ができますね。次に、正六角形の頂点と接するように円で囲みます。この円の半径は正三角形の1辺と同じですから0.5。つまり直径は1になります。いまはあえて単位をつけていませんが、cmやmで考えてもかまいません。
【郷さん】はい。
【西成先生】ここで正六角形の外側の線に注目してください。カクカクした円の円周といってもいいですけど、長さはいくつですか?
【郷さん】長さ0.5の辺が6つあるから3ですか。
【西成先生】そう。つまり、正六角形を円に見立てるとしたら、直径が1のときに、その外周はその3倍になるということ。円周率でいえば3です。でも、実際の円は一切カクカクしていませんね。正六角形のように近道を使うズルはしていません。ということは、円周は3よりも長くなるはずです。円周が3よりも長くなるということは、円周率も3より大きくなるということ。
【郷さん】おお!
【西成先生】すごくかんたんな説明をしただけですけど、いまの理屈がわかるだけでも「3.14」という数に少し血が通うと思うんです。ちなみに、円周率が3.05より大きいことを証明するには、円に内接する正十二角形の面積を、高校数学で習う三角関数を使って求め、3.05より大きいことを証明できればいい。
【郷さん】じゃあ「円周=直径×3.14」という公式でもいいのでは?
【西成先生】計算するときはそれでもいいんですよ。でも公式というからには正確性が求められるので、円周率やπと書いたほうが正確ですよね。特に円周率は永遠に続く数字ですから。数学の世界には、決まった数字を独自の文字や表現方法で示すものがたくさんあります。それらは「数学定数」と呼ばれていますが、πはその代表的なもののひとつです。
ピザを100分割すると……
【西成先生】ここではあえて円の面積を求める公式を先に発表せず、一緒に公式を導きだしていきたいと思います。まず、ピザを100分割することを想像してください。これを、図表3のように開いて、横にまっすぐ並べます。
【西成先生】すると限りなく二等辺三角形に近い超極細のピザの切れ端が100枚並ぶわけですね。二等辺三角形の底辺は厳密には丸みを帯びていますけど、さすがに100分割するとほぼ直線にしか見えません。
【郷さん】メザシみたい(笑)。
【西成先生】そのイメージもいいですね(笑)。下の部分は横とつながっているけど、上は三角形の頂点なのでつながっていません。ここで補助線を足してみると、図表4のように横長の長方形ができます。長方形の面積はもうお手のものですね。
【郷さん】たて×横!
【西成先生】OKです。ではこの長方形のたての長さってなんですか?
【郷さん】うーん……。あっ、もしかして半径?
【西成先生】よく気づきました! 「ほぼ半径」です。では横の長さはどうですか?
【郷さん】え……切れ端の幅の100こ分ですよね。でも切れ端の幅がわからない……。
【西成先生】それなら長方形全体を見てみましょうか。この長方形はもともと円だったものを広げたものでしたよね?
【郷さん】あ、もしかして円周?
【西成先生】正解! 今回は「ほぼ円周」ですけど、そういうことです。円周の長さは「円周=直径×円周率」でしたよね。ということはこの長方形の面積は「半径」と「直径×円周率」を掛けたものになります。ただし、長方形は私が補助線を足してかいただけなので、私たちが知りたい円の面積と同じではありません。そこでひとつひとつの二等辺三角形にクローズアップしてみましょう。するとなにか気づきませんか?
【郷さん】あ、半分だ。同じ形の三角形が上下反転して並んでいます。