「勉強になります」しか言えないなら無意味

その場限りの「気付き」を得ただけで、「勉強になります」と言ってはいないか。実のところ、何を隠そう、私も昔はそうだった。いろいろなコミュニティに参加し、著名な著者、経営者に会いに行って、「勉強になります」と言い続けた過去がある。楽しいし、その時間は充実している。だが、結局は何も残らなかったことが大半だった。

先にも述べたが、勉強は一人でやるものだ。資格試験や高校受験、大学受験を思い出してほしい。人から刺激を受けることは大事だ。しかし誰かと交流している時間があるぐらいなら、10分でも20分でも勉強したほうがいいと思ったはずである。それは社会人になっても当然同じだ。

もちろん、人と交流することによっていろんな学びを得ることができる。しかしそれは、そのテーマにおける「理解レベル」が3以上になってからにしよう(「理解レベル」は図表1を参照)。理解レベルが3以上になれば、同レベル以上の人と話をすることで、深い気付きを得られるだろう。

たとえば「採用におけるAI活用」というテーマで考えてみる。理解レベル1の人だと、「やっぱり採用面接にもAIを活用したほうがいいんですね。勉強になります」ぐらいしか言えない。こういった発言を聞いて相手も「ああ、そうですね。確かに、時代は変わっていきますからねえ……」といったリアクションしかとりようがない。

「今日も勉強になりました。ありがとうございました」これぐらいの感想しか言えない人は、まずそのテーマにおける知識やノウハウをしっかり勉強した上で、あらためてコミュニティやオンラインサロンに参加するようにしよう。

パソコンを使用する男性
写真=iStock.com/Skazzjy
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「知識量を増やすこと」に力を注いだほうが良い

勉強しているかどうかは、記憶している知識量で測ればいい。単に知識が増えればいいわけではないのはわかっている。しかし体系的な基礎知識がない限り、知識と経験が繋がって新たな知見や知恵が生まれることはないのだ。

理解が足りないと、コミュニティやオンラインサロンの頂点に君臨するオーナーの「養分」にされてしまう。いつかは成果が出ると信じて高い会費を支払い続けることになる。

それどころか、交流会で理解レベルの高い他メンバーの格好の営業ターゲットになることも多い。別のコミュニティに誘われたり、高額の情報商材を売り込まれる可能性もある。つまり「カモ」にされるわけだ。

横山信弘『トップコンサルタントの「戦略的」勉強法』(翔泳社)
横山信弘『トップコンサルタントの「戦略的」勉強法』(翔泳社)

私が理想として奨励するのは「ダム勉強」だ。松下幸之助が提唱した「ダム経営」と同じ発想だ。必要なときに必要な分だけ勉強するのではなく、普段から勉強を通じてある一定量の知識やノウハウを常に蓄えておくこと。

これがダム勉強だ。お金と同じで、知識やノウハウ資産に余裕があれば安心だ。ここぞというときに蓄えられた知識やノウハウを有効活用できる。

だから、「社会人の学び」では、理解レベル2ぐらいまでは少しばかり負荷がかかっても必須でやるべきだ。知識量を増やすことに力を注ごう。勉強は受験や資格対策と比べるとわかりやすい。同じ目標を持つ人と集まって情報交換するのもいいが、基本的には一人でやるものだ。そこは学生も社会人も同じ。勉強は孤独な作業であり、自分との戦いなのである。

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