厳しくすれば人材流出が進むだけ
最近、NPBのエース級の投手は、ほぼ全員がMLB挑戦を志すようになった。
日本の野球界には「人材流出」「空洞化」「NPBのMLBに対するマイナーリーグ化」を懸念する声が上がっている。
そして「MLBに挑戦する選手は、簡単に帰って来られないようにすべきだ」などという声まで上がっている。
例えば上沢の例を見て「ポスティングシステムで移籍する選手は『自由契約』ではなく『任意引退』にすべきだ」みたいな声も上がりそうだが、それは回りまわってNPB、日本野球の首を絞めることにつながりかねない。
NPBからMLBへの移籍や、MLBからNPBへの帰参のハードルを上げれば、MLBを目指す有望な選手は、NPBを経由せずにMLB傘下にはいろうとするだろう。
10年程前の台湾では台湾プロ野球(CPBL)が、八百長、野球賭博問題で揺れていたために、若手有望選手がCPBLを横目に見ながらNPBやMLBに入団しようとした。日本の高校を経てNPBに入団した陽岱鋼(元日ハムなど)や宋家豪(西武)、呉念庭(元西武)などがそうだ。
すでに佐々木麟太郎(花巻東高→スタンフォード大)など、アメリカで直接野球に挑戦しようという事例は出てきているが、NPB側が障壁を設ければ、台湾同様、日本も人材流出が加速するだけだ。
今のNPBとMLBの格差は、NPB側の経済成長がMLBに大きく後れを取っていることが原因だ。経営者の手腕やビジネスモデルの問題であって、選手の問題ではない。
NPB球団同志、そしてNPBとMLBの選手の流動性を高めるためにも、今回の上沢の移籍のようなケースを、日本球界さらにファンは寛大な気持ちで受け止めるべきである。