アメリカは「金の卵を産むガチョウ」

この「アメリカはうまく機能している」という信念がバフェットの態度を導いている。

バフェットは、「裕福な家族」が自分たちの子どもの面倒を見るのと同じように、「まっとうな市民で、市場でのスキルなど持っていない」人の面倒を見る社会プログラムを導入する必要があると言ってきた。しかしそのようなプログラムは、「金の卵を産むガチョウ」、言い換えれば、アメリカの市場経済を損なわないように実施されなければならない、と。

さらに「私は金の卵を産むガチョウに迷惑をかけるようなことはしたくありません。そして、信じられないことに、この国ではガチョウが金の卵を次々と産んでいるのです。私たちは、この市場システムの中で、人々が必要とする多くの財やサービスを提供する企業を生み出しているわけです」。

バフェットはまた、2009年に私の学生たちとのインタビューでも話したように、「世界はゼロサムゲームではない」こと、そしてアメリカ経済は、中国を含む諸外国の経済の改善によっても伸びていくのだと信じている。「(その結果)アメリカの生活水準は20世紀の間に7倍になったのです」と。バフェットによると、アメリカ経済への投資は今後もずっと利益を出し続けるのだ。

ニューヨーク証券取引所
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市況が悪化しても動揺してはいけない

バリュー投資(※2 編集部注)で成功するには、企業または銘柄の実際の価値を知る必要がある。その上でいったん投資したらそのままいつまでも保有し、売買しないことだ。「どのタイミングでバットを振るのが正しいか」を知っておくべきだ。1年に1度だけ正しいタイミングで振ればよいのである。

バフェットの試算によると、個人投資家は、S&P500指数にさえまず勝てない投資マネジャーを雇った結果、この10年で1000億ドル以上を失ってきた。2016年に、大型株に投資するアクティブ型ファンドのうちラッセル1000指数に勝ったのはわずか19%だったと報じられた。ラッセル1000指数とは、アメリカの株式市場で時価総額の大きい上位約1000社を追跡する指数のことで、アメリカ合衆国の全上場銘柄の時価総額のおよそ90%を占める。

ここで非常に重要な点を指摘しておこう。株式市場は、長期的には上昇する傾向がある、ということだ。したがって、個別銘柄の日々の価格変動を追ってはならないし、経済全般について気をもんでもいけない。株式市場は、100年ごとに悪い年が15回やってくる。ある日、ある週、あるいは今から1年後に何が起きるのかなんて誰も予測できないのである。

※2 企業の利益や資産に対して株価が割安な銘柄に投資する方法。