なぜプロに任せると損をするのか
このエピソードを通して、バフェットは、他人の資金をアクティブに運用しているヘッジファンドの投資マネジャーから得られる利益はほとんどないという、長らく信奉してきた考え方を強調した。
これは、ヘッジファンドをはじめとする投資マネジャーは通常、「2%/20%」に基づく手数料を投資家に課す、つまり毎年2%の管理手数料と利益の20%を取るという仕組みだ。
もし、バークシャー・ハサウェイが同じ手数料体系で資金を運用したら、現在の投資管理会社であるトッド・コームズとテッド・ウェスチャーは、「ただ、息をしているだけでどちらも毎年1億8000万ドルずつを得ることになるのです」とバフェットは指摘した。要するに、バフェットは、いわゆる「パッシブ投資」(インデックス投資)がアクティブ投資と同じか、それ以上のパフォーマンスを上げられると考えている。
バフェットは、バークシャー・ハサウェイのような機関投資家は投資先候補を絞り、「スカトルバット手法」(※1 編集部注)を通じて投資先企業の財務数値と文化をどちらも知ることに時間をかけるべきだが、個人投資家は、資金を分散して「アメリカの代表的な企業群」、つまりインデックス・ファンドを買うべきだと考えている。
※1 投資する企業を判断する際に、財務諸表だけでなく、消費者や競合他社、コンサルタント、経営者、以前の従業員や取引先などから定性的な情報(数字で表せない情報)も集める手法。
買ったら株式のことは一切考えない
バフェットは次のように説明した。
1942年3月11日、私が最初の株式を購入した日に皆さんができたはずの最善のことは、インデックス・ファンドを何か買って、それ以降決して新聞の見出しに目を向けず、株式のことを一切考えないことでした。
まさに皆さんが農場を購入した時にすることと全く同じです。皆さんはただ農場を買って、小作農家にそれを運営させればよいのです。そして、私は指摘しました。「1万ドルをインデックス・ファンドに投資して配当金を再投資しておけば……」とそこまで言って一呼吸置き、私がいくらと言うかと聴衆に考えさせてから付け加えたのです。「今なら5100万ドルになっているはずなのです」と。
当時、信じなければならないただ一つのことは、アメリカが戦争に勝つこと、そしてアメリカが1776年以来ずっとそうであったのと同じように今後も進歩を続けること、そしてアメリカが前進し続けるのであれば、アメリカ企業も進歩を続けるだろう、ということでした。つまり、どの銘柄をあなたが購入するかなんて悩む必要がなかったし、何を売り買いするか、そして連邦準備制度理事会(FRB)が存在し続けるか、どうなるかなどに心を迷わせる必要がなかったのです。そう、アメリカはうまく機能しているのです。