ソニーにあって、パナソニックに欠けていたもの
ソニーがソフトパワーで成功したのを見て、パナソニックも二匹目のドジョウを狙ったが、うまくいかなかった。1990年にハリウッドのメジャースタジオのユニバーサル(当時MCA)を61億ドル(当時のレートで約7800億円)で買収したが結局は、その5年後の1995年に80%の株式を手放し、2006年には残り20%を売却と、完全に失敗に終わった。
ソニーが成功してパナソニックが失敗したのは、前者にはゲーム事業の基盤があり、後者にはなかったことが影響している。
任天堂とソニーはゲーム関連事業があり、そのコンテンツ周りの販売が非常にたくみで、ゲームがあることによって知財部門が充実した。知的財産権の保護のための専門チームがしっかりある、そのような組織があることで、会社としても知財の、ひいてはソフトの重要性を認識し共有できたという側面もあるように思う。
ソニーの成功に学んだとは限らないが、ソフトコンテンツをうまく活用する企業が増えている。もっともこうした方法は芸能人を使った文房具や、人気キャラを利用するパチンコなど、昔から使われている手法ではあった。今はそれを遥かに大きな市場の中でビジネスライクに行なっている。
たとえば、日本生まれのキャラクターではキティちゃんが有名だが、キティちゃんは「仕事を選ばない」ことでも知られている。
以前、筆者がサンリオの社長に「キティちゃんはなぜ仕事を選ばないのですか?」と聞くと、「仕事を選ばないわけではない。全ての仕事を取っているんだ」と答えたのをよく覚えている。今から思えばキャラクタービジネス、ソフトコンテンツの時代を象徴するような話だった。