ソニーにあって、パナソニックに欠けていたもの

ソニーがソフトパワーで成功したのを見て、パナソニックも二匹目のドジョウを狙ったが、うまくいかなかった。1990年にハリウッドのメジャースタジオのユニバーサル(当時MCA)を61億ドル(当時のレートで約7800億円)で買収したが結局は、その5年後の1995年に80%の株式を手放し、2006年には残り20%を売却と、完全に失敗に終わった。

ソニーが成功してパナソニックが失敗したのは、前者にはゲーム事業の基盤があり、後者にはなかったことが影響している。

任天堂とソニーはゲーム関連事業があり、そのコンテンツ周りの販売が非常にたくみで、ゲームがあることによって知財部門が充実した。知的財産権の保護のための専門チームがしっかりある、そのような組織があることで、会社としても知財の、ひいてはソフトの重要性を認識し共有できたという側面もあるように思う。

渡邉哲也『世界と日本経済大予測2025-26』(PHP研究所)
渡邉哲也『世界と日本経済大予測2025-26』(PHP研究所)

ソニーの成功に学んだとは限らないが、ソフトコンテンツをうまく活用する企業が増えている。もっともこうした方法は芸能人を使った文房具や、人気キャラを利用するパチンコなど、昔から使われている手法ではあった。今はそれを遥かに大きな市場の中でビジネスライクに行なっている。

たとえば、日本生まれのキャラクターではキティちゃんが有名だが、キティちゃんは「仕事を選ばない」ことでも知られている。

以前、筆者がサンリオの社長に「キティちゃんはなぜ仕事を選ばないのですか?」と聞くと、「仕事を選ばないわけではない。全ての仕事を取っているんだ」と答えたのをよく覚えている。今から思えばキャラクタービジネス、ソフトコンテンツの時代を象徴するような話だった。

【関連記事】
【第1回】日経平均は2025年に4万5000円までスルスル上がる…経済評論家が「その後も長期的に上昇基調」と読む納得の理由
「三菱の名を汚すような相手に会社は渡すわけにいかない」同窓会と化した「三菱金曜会」に残された役割
なぜ知名度ゼロの「ハイセンス」が国内シェア3位に食い込んだか…躍進を支えた意外な家電量販店の名前
「クレヨンしんちゃん」からヒントを得た…「6年で年商43億円」30歳社長が作ったアパレル会社が急成長するワケ
「推しの子」を超す勢いで海外のファンが急増中…日本の高校を舞台にした異色の「ラノベ発アニメ」とは