「2つの悲劇」をテーマにした大傑作

ナルシシズム(自己愛)に溺れて自滅するというのは、現代的な話でもあります。ほかには『オイディプス王』などもぜひ読んでおきたい物語です。以下に、簡単なあらすじをご紹介します。

テーバイ王ライオスは「自分の息子に殺される」という恐ろしい予言を受けた。王妃イオカステが男児を出産したので、ライオスは赤子を遺棄させた。ところが赤子のオイディプスはコリントス王夫妻に拾われ、育てられることに。
成長したオイディプスはコリントスから旅に出て、その途中で偶然出会ったライオスを、父と知らずに、殺してしまう。
その後、オイディプスはテーバイ王となり、イオカステを妻に迎える。
しかし、彼には悲劇が待っていた。自分自身が父親を殺し、母親と結ばれていたことを知ってしまったのだ。

結末は、ぜひ実際に読んで確認してください。

『オイディプス王』は人間のタブーである父殺しと母との姦淫という2つの悲劇をテーマにした大傑作であり、もはや乗り越えが不可能な物語です。カフェで1時間もあれば簡単に読めますから、コスパやタイパを求めたいなら読まない手はありません。

古典=「人間の思考の原型」になっている

古典を読むと、それが人間の思考の原型となっていることがわかります。例えば『オイディプス王』を読むだけで、フロイトの「エディプスコンプレックス」という概念が理解しやすくなります。

ちなみに、エディプスコンプレックスの「エディプス」はオイディプス王を指します。フロイトは「男子には無意識のうちに父を殺して母とつながろうとする葛藤感情がある」と主張しました。

ジークムント・フロイト
ジークムント・フロイト(画像=Max Halberstadt/CC-PD-Mark/Wikimedia Commons

いちいち古典を読むのは大変。もっと簡単に古典の内容を押さえたいという人は、『100分de名著』(NHK Eテレ)を見ることをおすすめします。一流の専門家が100分で名著のエッセンスを解説してくれます。

私の教え子は古書店で『100分de名著』のテキストを大量に買い込んで読破しているといいます。テキストならポイントが押さえられていますし、多くの古典をチェックしやすい。非常に賢い方法だと思います。