三菱は撤退、日産は大規模なリストラを断行か
値下げ競争の激化や中国のEVシフトの加速、PHV分野での新モデル投入、エンジン車の需要減少などで、中国市場でわが国など先進国の自動車メーカーが十分な収益を獲得することは難しくなった。それは、今年に入ってのわが国メーカーの中国事業戦略からも確認できる。
三菱自動車は、販売台数の伸び悩みを理由に中国から撤退した。2024年3月期決算、同社は撤退に伴う特別損失として約230億円を計上した。2024年1~6月期、トヨタ、日産、ホンダの中国での販売台数は、合計で前年同期比13%減だった。かつて、トヨタやホンダは、中国の低燃費車優遇策でHVの販売拡大を実現した。ところが、EV投入の遅れなどもあり、収益の下振れリスクは高まっている。
日産自動車は、大がかりなリストラを余儀なくされつつある。6月、中国の国有企業と協働で運営した、江蘇省の乗用車工場(常州工場)を閉鎖した。年13万台、同社の中国生産能力の1割をカットした。
トヨタだけがふんばっているが…
常州工場の規模は小さかったが、2020年11月に稼働したばかりの新鋭工場だった。ゴーン事件で企業イメージが棄損した同社は、最重要市場の中国で生産体制を立て直し、電動車需要などを取り込もうとした。常州工場は重要な役割を発揮するはずだった。しかし、結果的に期待されたほどの効果は上がらなかった。経営陣の予想以上に、中国事業の収益率低下は深刻ということだろう。
7月以降も、わが国の自動車関連企業の中国事業リストラ発表は増えた。10月、ホンダは広汽本田汽車の第4工場(生産能力は年5万台)を閉鎖した。11月、同社は、湖北省武漢市の東風本田汽車第2工場(同24万台)の生産ラインの休止も決めた。
一方、トヨタは中国企業との合弁を起点に研究開発を進め、中長期的な視点で需要を取り込もうとしている。ただ、そうした前向きな取り組みはあるものの、わが国メーカー全体では、投資の増加よりもリストラを優先する企業は増加傾向だ。