ここで目を向けたいのが公的保障だ。実は、会社員の健康保険には所得補償制度もあるということをご存じだろうか。会社員が病気やケガをして仕事を休んで会社から給料をもらえなくなったり、減額されたりした場合は、給与の3分の2相当額の「傷病手当金」が健康保険から給付される。連続して3日続けて休んだあとの4日目から最長1年6カ月間まで給付を受けられるので、無収入になる心配はない。さらに大企業に勤めている会社員なら、通常の給付額に加えて「月収の8割まで」「最長2年間」など独自の保障が上乗せされる場合もある。

傷病手当金の給付期間が終了しても完治せず、障害が残った場合は障害年金の給付の対象になる可能性もある。障害年金は、手足の切断や失明など重篤な障害だけではなく、心臓ペースメーカー装着などの内臓疾患、うつ病などの精神疾患でも給付を受けられることがある。

また、公的介護保険は65歳以上が対象だが、脳梗塞やがんなどおもに加齢を原因とする一定の病気で介護を必要とする場合は、40~64歳の人でも公的介護保険が使える。

このように、就業不能保険の支払い対象になるような重篤な病気や障害が残るケースでは、公的保障が相当程度使える状態になっているはずだ。また、定期保険や終身保険など他の生命保険からも保険金がおりる可能性がある。就業不能保険の加入を検討しているなら、公的保障や他の保険も考慮し、さらにどの程度の就業不能が対象となるのかを確認したい。

なお、国民健康保険は傷病手当金がなく、自営業者は会社員に比べて働けなくなった場合の経済的リスクは高い。しかしながら、自営業者の経済的リスクは病気やケガによる就業不能のリスクに限らず、事業不振等の売り上げ減少リスクもある。よってどんな事態にも対応できるよう、貯蓄を積み上げることが備えの基本に変わりはない。

(構成=早川幸子)
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