2012年10月のある土曜日、普段なら人気のない兜町が、多くの個人投資家で賑わった。東京証券取引所が、不動産証券化協会とともに「秋のJ-REIT(ジェイリート)フェア」を開催したからだ。

J-REIT(日本版不動産投資信託)は、2001年に登場した比較的新しい投資商品とその法人のことだ。「投資信託」という名称でいささか混乱しそうだが、要はオフィスビルや商業施設、レジデンスなどの不動産物件に投資する投資会社だ。その株式が東京証券取引所に上場されており、通常の株式と同様に売買できる。12年11月現在の上場銘柄数は、35を数える。

この不動産投資信託が今、人気の理由は、高い分配利回りが期待できるからだ。12年11月26日時点の分配利回りを見ると、最も高いのが「ジャパン・ホテル・リート投資法人」の7.46%。最も低い「インヴィンシブル投資法人」でも3.35%ある。平均で4.92%だ。10年物国債の利回りが0.73%、東証一部上場銘柄の平均利回りが2.2%程度であるのに比べても、J-REITの分配利回りの有利さがわかる。

また、2012年に入ってから、J-REITの株価が上昇トレンドに入ってきたことも注目材料だ。J-REIT全体の株価動向を示す「東証REIT指数」は、2011年11月時点で805ポイントの安値を付けているが、その後、多少の上下はあるものの、上昇トレンドに入り、2012年11月26日時点では1070ポイントの高値を付けた。

1年間で約33%の上昇だ。株安、円高により、日本株全体の不振が続くなか、高い分配利回りとともに3割以上もの上昇を示したのだから、関心が高まるのも当然だ。

これだけの上昇率になると、そろそろ天井かという見方も出てくるが、J-REIT指数の過去最高値(※2012年12月時点)は2612ポイント。上昇余地はまだある。