国税庁が発表した2011年のサラリーマンの平均年収は409万円。10年で約45万円も減っている。税金や社会保険料などを差し引いた手取りが300万円台となれば、生活するのが精一杯という人もいるだろう。家計への不安がつのる中、注目されているのが民間の生命保険会社が販売する「就業不能保険」だ(損害保険会社では似た商品が「所得補償保険」と呼ばれている)。
就業不能保険は、病気やケガをして働けなくなった場合に給付金を受け取れるというもの。一般的な医療保険が医療機関への入院を前提としているのに対して、就業不能保険は自宅療養も対象で、長期にわたる就業不能をカバーするものだ。たとえば、ライフネット生命の「働く人への保険」は、病気やケガをして働けない限り、65歳まで最大1億円の給付金を受け取れる。40歳の男性が、月15万円ずつ給付金を受け取る場合の月払い保険料は3652円だ。
万一のとき、こうした保険から補償を受けられれば心強いが、支払い条件はかなり厳しい。たんに病気やケガで仕事を休んでいるだけでは「就業不能」とは見なさず、「病気やケガで入院または医師の指示で在宅療養をしており、少なくとも6カ月以上いかなる職業においても全く就業できないと医学的見地から判断される状態」になって初めて給付の対象になる。
この定義に当てはまるのは、脳梗塞で倒れて身体麻痺が残ったり、若年性アルツハイマーによる行動障害で仕事を辞めざるをえなくなったりするなど、重い障害を負った場合だろう。うつなどの精神性疾患も対象外だ。また、就業不能状態になってから180日間は保障の対象にならないという条件もあり、ハードルはかなり高い。ましてや、リストラされたら保険金が受け取れると勘違いしている人もいるようなので注意したい。