イザという時の助け「滞納相談センター」の活動停止

国保料を滞納してしまった際「行政の窓口に相談」して解決できれば一番いいのだが、これまで述べたように分納額を一方的に決められたり、分納していても差し押さえられたりなど、強硬姿勢の自治体もある。そこでこれまでは地方自治体の税金や国保料の滞納に対して、数十人の税理士が無償で相談に応じる有志の団体「滞納相談センター」が活躍してきた。しかし、滞納相談センターは、24年6月、9年間続けてきた活動を停止してしまった。私はたびたび取材にうかがっていたが、日本全国の追い詰められた納税者たちからの電話が鳴り止まず、事例は複雑で、無償で対応するには労力がかかりすぎたのだと思う。

電卓で計算する税理士
写真=iStock.com/kazuma seki
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代表を務めていた税理士の角谷啓一氏は「今すぐ助けてほしいという緊急性の高い相談が多かった」と振り返る。いくつかの事例を語ってもらった。

「コロナ禍では建設業を営む50代後半の男性の相談がありました。元請け先の企業の経営状態が厳しくなり、仕事が減って月の所得が10万円にも満たない。奥さんがパートで月7、8万円の収入を得ていますが、食べていくのが厳しい状態。男性は建設業に加えてアルバイトをしているのですが、そのアルバイトの給料である5万円をすべて市に差し押さえられてしまった。これは違法性が高い差し押さえですが、国保料の支払いにあてられたから、とのご本人の意向で苦情申し立てのみにとどめました」

一番生活費がかかる時に、最も国保料が高くなる

この50代男性は、10年前から国保料を含めた税金を滞納しており、その額、200万円にのぼる。延滞金も200万円近くに達し、総額約400万円。延滞金の利率は年々下がっているものの、今は年8.7%(納期限の翌日から2か月を経過した日の翌日以降・事例によって一部免除あり)。しかし約10年前は14.6%だったため、男性は当時の延滞金もかさんでいるのだろう。

「男性一家の滞納は、一番上のお子さんが大学生になる頃から始まっています。子どもが4人もいるため、それぞれの均等割が加算され、当時の国保料が月額6万8000円。一番生活費がかかる時に最も国保料が高くなるんです。納められるわけがありません。現在も、事業の収支、一家の生活費を計算して、食費を1日700円まで切り詰めても、納付可能額はゼロなんです。役所は『納めろ』しか言いませんが、それぞれの実情をまずは把握してほしいと思います」(角谷氏)