そして、この配慮範囲の面積が広い利他的な人ほど得をし、面積が狭い利己的な人ほど損をするというのが、私の研究から導き出される結論です。後で詳しく説明しますが、世の中には、利己的な人ほど運をつかむチャンスを失い、ますます損をする法則があるのです。
もしもあなたが、自分ではそんなに悪い人間ではないつもりなのに損することが多かったり、頑張っているのに不運続きだと感じているとしたら、一度、自分は心の奥底で本当は何に焦点を当てているか、文字通り胸に手を当てて考えてみる必要があります。人を貶めるほどのことはしていなかったとしても、自分ひとりの不安感や近い将来のことばかり気にしがちではなかったでしょうか。
利己的と利他的とは全く別次元に位置する対立概念ではなく、地続きの連続的なもの。図1の面積の大小が示すとおり、程度の違いにすぎません。一見気が利くタイプなのに評価の上がらない人は、自分の心の幅、つまり潜在的な配慮範囲が少し狭く、利他性が低いことに原因が潜んでいるのかもしれないのです。
姑息な損得勘定が必ずバレる理由
自分の損得ばかりを考えて行動する利己主義者は、正直者を出し抜いて一時的には得をします。が、長い目で見れば必ず損をする運命にあります。
それは、人間の社会には次の3つの原理が存在しているからです。
(1)互恵不能原理
(2)暴露原理
(3)集団淘汰原理
まず、(1)の互恵不能原理から。自分の損得ばかりに焦点が合っている利己主義者は、「お互いさま」で成り立っている人間社会で、最終的には「嫌なヤツ」として人々から村八分にされます。そのため、よいパートナーに恵まれて力が倍加したり、窮地を支援者の助けで脱したりという幸運にも恵まれづらく、「互恵」が「不能」になるので、結局は正直者より損をします。これは構造がわかりやすいため、あからさまにわがままな行動をとる人は、実際のところ少数派でしょう。