経済における世界平和は協業によって成り立つ

とはいえ石油エネルギーに頼らずに、肥料は「植物由来」のみ、エネルギーは「太陽光パネル」だけを使えばいいのではないか。

そう考え調べてみると、植物由来の肥料も、原料は輸入に頼っているという現状がありました。また、太陽光パネルのみでの農作業には限界がある。今、経済産業省が発表している「エネルギー基本計画」でも、グリーンエネルギーをどんどん増やしましょうというGX(グリーントランスフォーメーション)の動きがありますが、見通しは不透明です。

しかも、太陽光パネルを使うための送電網を整えるのは電力会社であり、実際にそれを網羅する財務体質もそがれつつあります。すでにアメリカでは、太陽光パネルやグリーンエネルギーに対するアンチの動きが出つつあります。

こうして考えると、自給自足を実現させるのも、石油という輸入品である。だからこそ「世界平和がないと、生き残れない」文字通りそう感じるようになりました。

経済における「世界平和」とは、世界的な分業や協業によって成り立つということです。

石油価格の上昇は地政学リスクに由来する

コロナ禍以降、ウクライナとロシアの戦争や中東の戦争など、世界平和がおびやかされています。そして物価の上昇が各国で起きています。

コロナ禍前は、物価指数は比較的落ち着いていました。歴史的に見ても、あれだけ落ち着いていた時代はまれでした。それを裏付けるかのように、全米経済研究所(NBER)のワーキングペーパーには、世界が平和に協業できていることが物価の安定に大きく影響すると示した論文も紹介されています(*1)

全米経済研究所が入るビル
全米経済研究所が入るビル(写真=Astrophobe/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

今や、日常品に始まる物価高騰はとどまるところを知りません。政治家の方々には何よりもまずインフレ対策に着手してほしいですが、そもそも日本の物価は、なぜ上がっているのでしょうか。

ざっくり言えば、輸入品の物価上昇による影響が大きいからです。ではなぜ、輸入品の物価が上がっているのか。円安の影響と、石油などの資源価格が上昇しているからです。

円安にはさまざまな要因が絡んでいますが、石油価格上昇の主要因は、戦争と、それに伴う各国の摩擦の影響が大きい。要するに中国・ロシアと西側諸国、あるいは中東諸国の対立などの「地政学リスク」に由来しています。

(*1)Stock, J.H. and M.W. Watson, ‘Has the business cycle changed and why?’, in M. Gertler and K. Rogoff (eds), NBER Macroeconomics Annual 2002, Vol. 17, MIT Press, Cambridge, MA, 2002