トップが前面に出てポリシーと戦略を語れ

政府が適切なクライシス・コミュニケーションをできなかったのは、危機管理の際に必ず踏まなければいけない手順を踏んでいなかったからである。この手順は企業の危機管理においても共通している。

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危機管理の手順

事故・災害の危機管理において真っ先にやるべきことは、現場に情報収集と情報発信を担うチームをそれぞれつくることである。現場は起きた事故・災害への対応で手一杯になり、そこから情報を得ることは困難だからだ。

情報収集担当と本部に対する情報発信担当を分けるのは、東京電力であれば情報収集チームに対して政府、警察、消防、社内のさまざまな部署からどんどん連絡や問い合わせが入り、それに対応するだけで手一杯になるからである。チームといっても事案の大きさによっては1人でよい場合もあるし、東日本大震災のケースであれば各3人は必要であろう。

2番目にやるべきことは協同対策本部の設置である。原発事故に関しては東電と原子力安全・保安院、政府の3者による協同対策本部の設置が必要であり、最悪でも24時間以内に立ち上げねばならなかった。しかし実際に政府が東電との統合連絡本部を設置したのは11年3月15日。震災当日を含め5日目であった。

3番目は協同対策本部に専門家や経験者を招聘し、適切な判断を下せる体制を構築することである。わかっていない人がたくさん集まったところで何の意味もない。専門家が協同対策本部に入ったら、今後起こりうる事態を予測して5段階くらいに層別し、想定される事態ごとにポリシーと戦略、戦術を立てる。