防衛費の大幅増額が起きる可能性がある

そんな中で、日本の経済政策・金融政策の舵取りは一段と難しさを増す。与党が過半数割れとなって政権が流動化していることもあり、利上げによる金融政策の正常化など、本来行うべき政策が取りにくくなり、国民受けするその場しのぎの景気対策に終始することになりかねない。特に来年7月に参議院議員選挙が控えていることから、どこの政党も国民負担が生じる改革案は打ち出せない。つまり、本格的な増税議論はまずできない。

一方で、石破首相とトランプ大統領の組み合わせで一気に前進しそうなのが、安全保障分野。トランプ氏は、日本防衛で米軍に依存する体制から日本自身による自前の防衛力強化を求めてくると見られ、米国の武器購入などによる防衛費の大幅増額が起きる可能性がある。石破氏は元々、日米地位協定の見直しを含め、自国の防衛は自国で賄うべきだという思考を持つとみられ、トランプ大統領と方向性が一致する可能性がある。そうなると、日本は今以上に防衛費の支出が必要になってくる。

岸田内閣時代に、防衛費を大幅に増やし、5年間で43兆円とすることを決めているが、財源としての増税は先送りされ、2027年度からということになっている。法人税と所得税、たばこ税で1兆円の増税を行うが、与党が過半数を割ったことで、年末の税制改革大綱で具体的な増税策を決められるかは予断を許さない。

デスクの上に卓上サイズの星条旗と日の丸
写真=iStock.com/MicroStockHub
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日本企業の業績が大きな打撃を受ける可能性も

そんな中で、さらに防衛力強化となり、さらなる増税が必要となれば、企業収益の悪化や個人消費の減少が避けられない。トランプ政権との外交交渉次第とはいえ、浮上しかけていた日本経済にとってさらなる重石が加わることになりかねない。

円安が進めば本来は貿易で稼ぐというのが常套手段だが、トランプ時代には米中間の経済摩擦が激しくなるという見立てがもっぱらだ。関税の引き上げにとどまらず、経済安全保障などを理由に中国と日本の間の貿易量がさらに減少するようだと、中国経済のみならず、日本経済への悪影響が鮮明になってくるだろう。中国との貿易は増やせず、かといって「アメリカ・ファースト」の米国向けにも輸出が増やせないとなると、自動車メーカーなど日本企業の業績に大きな打撃になる可能性がある。

もちろん、トランプ大統領が前政権時代と同じ政策を打つかどうかは分からない。トランプ氏を取り巻くブレーンの多くも入れ替わっており、なかなか新政権の政策を見通すことは現段階では難しい。だが、回復途上の日本経済に、荒波が襲ってくることだけは間違いなさそうだ。

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