景気を過熱させる方向に向かわせると見られている
もちろん、トランプ氏が大統領に就任した際の政策は、「何が飛び出すか分からない」リスクも孕んでおり、7日の東京株式市場では日経平均株価が一転して小動きとなった。当面は、次期トランプ政権の政策や人事が報じられるたびに株価や為替が大きく反応することになりそうだ。
現状でも米国経済は底堅く推移しており、物価上昇率は鈍化する一方、給与も増加が続き、消費も底堅い。高いインフレを抑えるために金利の引き上げを続けてきたが、物価が沈静化しつつあることからFRB(連邦準備理事会)は利下げに転じている。もっとも、金利を下げると再び景気が過熱するリスクもあり、FRBは慎重な金融政策の舵取りを求められている。
そんな中で、トランプ大統領の登場は、景気を過熱させる方向に向かわせるとの見方が強い。トランプ前政権時の2017年に成立した減税・雇用法、いわゆるトランプ減税のうち、2025年末に期限が切れる個人所得税の減税を、恒久的に延長すると見られる。これは所得税の最高税率を39.6%から37%に引き下げているもので、金持ち優遇という批判もある。また、相続税や贈与税の基礎控除も大きく増やし、減税となっている。
「トランプだから何をやるか分からない」
また、法人税率も大幅に引き下げるのではないかと見られている。トランプ氏が主張する「アメリカ・ファースト」を実現するために、法人税率を引き下げることで、企業が米国内に回帰することを狙っている。
一方で、景気が過熱し、物価上昇が再燃した場合には、FRBが再び利上げに動くこともあり得るが、トランプ氏は前政権時代、金利の引き下げによるドル安を求めた。ドル安によって米国の製造業の競争力を高めることができるという考えからだ。米国企業優先という考えに基づいて、外国からの輸入品に高関税をかけることも前政権時代には行っている。
本来ならば、景気過熱による金利上昇で、ドル高に動くと見るべきだが、「トランプだから何をやるか分からない」と疑心暗鬼から、ドル安誘導もあり得るという見方が出ている。当選が報じられた瞬間こそドル高円安になったものの、その後、円安が続かないのは、こうした見方から相場が一方向に動けない事態になっているからだ。