ただ「走る」だけでぐんと頭がよくなるという、スーパー運動法が最新脳科学でわかってきた。そのメカニズム&メソッドを公開!
ランニングが健康にいいことはいまさら言うまでもないだろう。脂肪を燃焼させ、メタボ対策になるのはもちろん、ほかのさまざまな生活習慣病の予防にもなる。ただ、「走ることで頭がよくなる」と言われても、最初はピンとこないかもしれない。
でも、運動することで、「心がスッキリする」「頭がクリアになる」といったことは誰もが経験する。逆に、習慣的に走っているランナーの多くは、数日間走らないと「気持ちが悪い」という感覚に襲われる。運動と精神の間に結びつきがあることを、私たちは経験的に知っているのだ。
そうした経験知の背景にあるメカニズムが、最新の脳科学(神経科学)の研究によって、いま次々と解き明かされている。そして、ランニングなどの有酸素運動は、単に気分を爽快にしてくれるだけでなく、「脳を鍛える」ということまでわかってきたのである。
一昨年に出版されて話題になったジョン・J・レイティ/エリック・ヘイガーマンの『脳を鍛えるには運動しかない! 最新科学でわかった脳細胞の増やし方』(NHK出版)の中では、アメリカの教育現場でのこんな驚異的な事例が紹介されている。
――イリノイ州のネーパーヴィルのハイスクールでは、1990年に通常の授業の開始前に「0時限目」として、エクササイズの時間が設けられた。最初は肥満の急増に危惧を抱いた体育教師が、生徒たちのフィットネスのために始めた試みだった。ランニングやエアロバイクだけでなく、ビデオゲームの「ダンスダンスレボリューション」で踊ってもいい。心拍計をつけて、個々の身体能力に応じてしっかり強度を上げながら運動をするのである。
このプログラムを開始してから、生徒たちは見違えるほど健康になった。ある学区では太りすぎの生徒はわずか3%にまで減ったのだ(全米平均は約30%)。しかし、そうした身体面の成果よりも関係者を驚かせたのが、生徒たちの学業成績が急激に伸びたことだった。99年のTIMSS(国際数学・理科教育動向調査)に、ネーパーヴィルの学区の生徒がまとまって参加したところ、理科で1位、数学では6位に入ったのだ。アメリカがアジア各国にボロ負けを続けていた中での快挙だった。
0時限目の運動が脳内にもたらした変化が、その後に続く授業での学習効果を高めていたのである。いまでは体育教師は「わたしたちの授業では、脳細胞を作り出しています」と語るようになっている――。