平均的な食生活なら問題なし

ただ、アクリルアミドは、日常の食事から完全に除去することはできない成分です。加熱調理をしなくても長期保存することで少しずつ発生するため、生の食品だけを食べる生活を送ったとしても摂取量をゼロにすることはできません。

そのため、さまざまな食品メーカーが、アクリルアミドの発生を抑える調理法や加工法を開発し、低減するための取り組みを行っています。現在では、すでに市販食品のアクリルアミド量の低減が進んでいるといえるでしょう。家庭でも、アクリルアミドの多い食品を控えたり、揚げ物や焼き物、炒め物の頻度を少なめにする、ナッツや乾燥果実は早めに食べきるなどの対応で摂取量を減らすことが可能です。

また、アクリルアミド自体は有害な化合物ですが、日本人の平均的な食生活では健康に大きな影響を及ぼすことはなさそうだと考えられています。「アクリルアミドの摂取量が明らかに多い食生活の人は要注意」くらいに思っていただくといいでしょう。

フライドチキンとポテト
写真=iStock.com/taka4332
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食べ物に含まれるAGEsは有害か

さて、食品に含まれるAGEsは、アクリルアミドだけではありません。ほかのAGEsは、アクリルアミド同様に危険なものなのでしょうか?

例えば、こんがりと焼けた美味しそうなトーストやコーヒーの黒色はメイラード反応で発生した「メラノイジン」という色素によるものですが、これもAGEsの仲間です。褐色色素であるメラノイジンは、強い抗酸化作用を持つことが知られており、油脂の酸化を抑制し、食品の保存性も高めている有用な成分です。つまり、危険なものとはいえないでしょう。

そのほかにも食品に含まれるAGEsには、「CML」「MG-H1」などのいくつもの種類がありますが、体の中でどのように働くかはまだ十分にわかっていないのが実情です。多量に摂取するとインスリン抵抗性を高めるという悪い報告もありますが、食物繊維と同じように腸内細菌に利用されるなどの有用な面もあり、よい悪いで分類できるほど単純ではなさそうです。

なお、味噌などの日本の伝統的な保存食品にはAGEsが高いものも多いですが、それを理由とした健康被害は報告されていません。AGEsの量が多いからといって避ける必要はないでしょう。