がんとの闘いは一体どんなものなのか。起業家の高山知朗さんは2017年2月、45歳のときに急性骨髄性白血病が見つかった。高山さんにとって3回目のがんで、選んだのはへその緒と胎盤の血液「臍帯血」を移植する治療法。ドナーである当時1歳の女の子が生まれた時の臍帯血に「のりこちゃん」と名付け、移植を受けた。著書『5度のがんを生き延びる技術 がん闘病はメンタルが9割』(幻冬舎)より、移植から22日間の記録を紹介する――。
白血球の数は4000以上→10に激減
前処置が終わり、1日のお休みを挟んだ4月14日。移植の当日となりました。移植Day0です。移植治療では移植日をDay0として経過日数をカウントしていきます。
前処置によって白血病細胞とともに正常な血球細胞も破壊されました。その結果、この日の白血球の数は30。翌日はさらに減って10に。健康なころは4000以上あったので、ほぼゼロになり、免疫力はほとんどない状態です。移植の準備は整っていました。
午前中にシャワーを浴び、午後、臍帯血移植を受けました。
「移植」と言っても手術ではないので、実際はあっけないものです。病室に先生と看護師さんが来て、太めのシリンジ(注射器)に入った解凍ずみの臍帯血を、CVカテーテル経由でゆっくり注入(輸注)してくれました。ものの数分です。これで移植は完了です。
注入しているときに、なぜか胸の辺りから磯の香りというか、海苔の香りがしました。これは、移植患者さんはみなさんそのように言うようです。
「女の子は元気がいいから暴れるよ」
こうして、のりこちゃんを無事に私の体の中に迎え入れました。また一歩、治療が進みました。
移植後には血液内科部長の谷口修一先生(現:国家公務員共済組合連合会 浜の町病院 院長)も様子を見に来てくれました。
谷口先生は、「女の子の臍帯血はすごいよ! 特に女の子の臍帯血を男の人に移植するとすごい。女の子は元気がいいから暴れるよ。でもそれが治療にはいいんだ。まあ見ていて(笑)」とおっしゃいます。後々、実際にその意味を知ることになりました。