「睡眠の質」は「朝食のたんぱく質量」で決まる

受験日が近づいてくると、睡眠時間を削って勉強する子が多くなります。

ですが、睡眠不足は、脳の働きを低下させます。

睡眠中、脳の神経細胞は、修復と再生を行なっているというのに、睡眠を削っては、日中に傷ついた神経細胞を修復できなくなります。しかも、集中力や注意力、判断力などにかかわる前頭葉は、睡眠不足によるダメージを負いやすいのです。

学生は試験のために不安を抱える
写真=iStock.com/Nuttawan Jayawan
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こうした状態で勉強しても、脳は学んだことを十分に定着させられません。何より、メンタルを不安定にします。不安感や焦りが大きくなれば、やる気は落ちます。

そこで重要になってくるのが、幸せホルモンのセロトニンと睡眠ホルモンのメラトニンです。日中には意欲的に勉強し、夜になったら眠る。このサイクルをつくり出してくれるのが、セロトニンとメラトニンなのです。

じつは、睡眠の質を上げるため、朝食の役割は重要です。というのも、必須アミノ酸であるトリプトファンの朝食時の摂取量と寝起きの状態には、相関関係があることがわかっています。朝食でのトリプトファンの摂取量が少ない子は寝起きが悪いことが多く、トリプトファンの摂取量が多い子は寝起きがよいとも報告されています。

では、どの程度の量のトリプトファンをとるとよいでしょうか。最低でも、朝食に300~400mgが必要とされています。朝食づくりの参考にしてください。

〈平均摂取量〉 〈トリプトファンの含有量〉

魚(100g) 215mg
肉類(100g) 205mg
納豆(48g) 98mg
卵1個(50g) 90mg
牛乳(100ml) 45mg
味噌(20g) 25mg

どんな脂質をとるかで「メンタルの強さ」も変わる

受験が近づいてくると、子どものメンタルはだんだん不安定になっていきます。

イライラして怒りっぽくなることもあるでしょう。模試の結果に深く落ち込んでしまうこともあると思います。

子どもにしてみれば、人生をかけて勉強しているのですから、不安になるのは当然。ただ、いかにすばやく切り替えて前を向けるのか――ここが重要です。

メンタルの不安定さも、ポジティブさも、感情をつくり出しているのは、脳です。

では、脳は何からできているのでしょうか? 私たちの脳は水分を除くと、半分以上が脂質です。もちろん、脂質は自分が食べたものからできています。

「物事をポジティブに考えられる脳をつくってあげたい」――。

その思いは、毎日の食事づくりで実現できるのです。

ここでは、「脳にいい脂質&栄養素」という観点からおすすめの食材ベスト5(図表3)を紹介します。

なお、脳の健康を考えたら、できるだけ摂取を控えたい脂質があります。

それは、「トランス脂肪酸」です。脳の神経細胞は、DHAやEPAなどのオメガ3系脂肪酸が20%以上含まれることで情報を正しく伝達できる、とされています。

ところが、オメガ3系脂肪酸が不足してしまうと、かわりにトランス脂肪酸が脳内で使われます。こうなると脳の働きが低下する危険性が出てきます。それはつまり、思考力が落ち、物事をマイナスにとらえやすくなる、ということです。

トランス脂肪酸には、天然のものと加工によってできるものがあります。問題なのは、加工によってできるトランス脂肪酸。植物性の油に水素を添加すると、固形の油ができます。そこにトランス脂肪酸は多く含まれます。

具体的には、マーガリンやショートニングなどです。これらを使ってつくられたパンやケーキ、クッキー、スナック菓子、レトルト食品、ファーストフードのポテトフライやフライドチキンなどの揚げものも、トランス脂肪酸が多くなります。