配偶者の死後に離婚の手続きをとる「死後離婚」が急増している。法務省の戸籍統計によると、「死後離婚」の件数は2012年で2213件だったが、10年で3000件を突破した。離婚カウンセラーの岡野あつこさんは「精神的なけじめのほか、義理の両親との縁を切るために『死後離婚』する人も多い」という――。
「お義母さん、申し訳ないですが、家を出て行ってください」
千葉県に住む80代女性Aさんのところに、息子の嫁のB子(50代)がやってきてこう言いました。
「お義母さん、申し訳ないですが、家を出て行ってください」
Aさんは驚きました。高齢で食事も介助が必要なので、息子夫婦が同居して介護していたのですが、約3カ月前に息子が事故で他界し、49日の法要を済ませたばかりだったのです。
「どういうこと? ここは私の家よ」
「いえ、お義母さんが亡くなった主人にプレゼントしたマンションです。お忘れになりましたか?」
同居で介護してくれるはずだった
たしかに、嫁のB子の言う通り、いま住んでいるマンションは、Aさんが息子夫婦にプレゼントしたものでした。
「それは同居で介護してくれる約束であげたのよ」
「でも今は私の名義なんです。亡くなった主人から相続したので」
「そりゃそうだけど……」
「実は、ちょっと前に『死後離婚』の手続きをとったんです。これで私とお義母さんは赤の他人です。だから、家から出ていってほしいのです」
Aさんは困り果ててしまいましたが、B子は「家を出て高齢者施設に入れ」と主張して譲りません。
結局、B子に押し切られる形で、Aさんは長年住んだマンションを退去することになったのです。