日本のアニメは戦争をどう描いてきたのか。防衛研究所防衛政策研究室長の高橋杉雄氏は「その二つを考える上で『機動警察パトレイバー2 the Movie』は欠かせない。現在のウクライナ戦争にまで通じる、戦争に対する当事者意識の欠落を見事に描き出した傑作だ」という――。

※本稿は、高橋杉雄『SFアニメと戦争』(辰巳出版)の一部を再編集したものです。

大きなモニターと暗い部屋の兵士やスパイのグループ
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リアルロボット路線の究極形だった『パト2』

日本のSFアニメと戦争の関係を考察する上で絶対に外すことができない作品に、『機動警察パトレイバー2 the Movie』(1993年)がある。

機動警察パトレイバー』(1988年)は、コミック版、OVA版、テレビ版が展開したメディアミックス的な作品で、舞台は世紀末の東京である。そこでは、レイバーと呼ばれる二足歩行のロボットが実用化され、土木作業などを行うようになっており、レイバーの普及とともに犯罪にも使われるようになったため、警察もレイバー犯罪取り締まり用のパトロール用レイバー(略して「パトレイバー」と呼称される)を「特殊車両二課」(略して「特車二課」と呼称される)という組織を作って運用している世界における物語である。

舞台が現実の東京であり、警視庁という現実の組織の警察官が登場人物になっているために、「リアリティ」の度合いが極めて高く、いわゆる「リアルロボット」路線のある種の究極の姿だといえる。