82歳の女性は3年前に夫が他界し、60歳の独身の長男と同居している。長男はずっと無収入状態で今後も働く気はない。女性は自分が死んだ後の息子が暮らしていけるかが不安で、「一緒に死んだほうが……」と心情を吐露する。だが、FPに家計相談して試算してもらうと、思わぬ光明が見えてきた――。
シニア女性の組んだ手元
写真=iStock.com/BlackAperture
※写真はイメージです

知られてから5年経過の「8050問題」はより深刻化

「8050問題」という言葉が使われるようになってから、5年ほど経過したでしょうか。80代の親が50代の無職の子を扶養している状況を指す言葉で、ひきこもりの家族が親子ともども高齢化し、深刻な問題となっていることを表しています。

先日、相談に来られた母親は82歳。子はすでに60歳になっていました。無職期間が長く続き、もうこれからの就業は難しい状況です。母親は、自分が亡くなった後のことを心配しています。

相談者の家族構成
相談者:加藤昌子さん(仮名)82歳(年金生活)
長男(60歳、無職)と同居
※夫は3年前に他界

資産
・貯蓄額:800万円
・自宅(戸建て)

収入
・母親の老齢基礎年金と亡き夫の遺族厚生年金で、合計183万円

支出
・生活費:年額約200万円

「子どもがひきこもりで、私がいなくなった後が心配です」という相談を多く受けています。高齢であっても親が存命の間は、親の年金で親子3人または2人で何とか生活費を賄えます。

しかし、親が2人とも亡くなってしまうと、収入がなくなり、親が遺した貯蓄を取り崩しながらの生活になります。

親としては、自分たちが亡くなった後に子が1人で生活をしていくことができるのか心配で、私のもとに相談に来られます。

私は将来の資金状況のシミュレーションを作成して、対策をご提案します。子が2人以上いれば遺産分割をどうするかなどがポイントとなりますし、子がまだ若ければ少しでも働けないか、などを検討します。

しかし、今回相談に来られたケースは子がすでに60歳になっています。60歳と言えば、「定年退職」の年齢です。最近は再雇用で働く人が多いものの、今まで働いていなかった人が新たに仕事をしていくのは厳しいでしょう。なかなか対策が取りづらく、難しい状況です。