ひきこもって8カ月のCくんのケース

C君の例です。

C君は中学受験を経て私立の進学校に入学したものの、中1の3学期から徐々に欠席が増え、中2の4月からは完全に行かなくなりました。部屋にひきこもって、「フォートナイト」というゲームを1日中やっていたそうです。

在籍していた私立中から退学勧告を受け、公立中に転校したものの、1日も行きませんでした。

ご両親が私のところに相談に来たのは中2の11月です。すでにひきこもって8カ月が経ち、ステージ③でした。

ご両親と話し合い、スタッフとも職員会議をして、11月下旬に初回の家庭訪問支援を行いました。訪問することをご両親から伝えてもらうと、「会いたくない」と言ったものの、大きな抵抗は見られず、そわそわした様子でした。

訪問予定時間の30分前までゲームをしていましたが、スタッフが訪問すると、部屋で布団をかぶって出てきません。少し動いたりする様子から、こちらの話は聞いているようでした。

布団越しにスタッフが自己紹介をしたり雑談をしたりしてこの日は終了しました。

スタッフが帰ると、「勝手に人を呼んで話を進めるな」とご両親に怒鳴り、大荒れでした。ご両親には拒否反応はよくあることと伝えていたので、冷静に対処してくれました。

C君はこの後、家庭訪問支援を受け続け、最初の訪問から8カ月後の中3の7月には当会の教室に初めて登校。その年の冬からは毎日通うようになり、当会の生徒会長を務めたり、インターンをしたりして、大活躍するようになりました。

図書館で友達と話す日本人学生
写真=iStock.com/skynesher
※写真はイメージです

一方、この拒否反応を恐れて、踏み出せないと、ひきこもりが長期化してしまいます。

支援機関のアドバイスに従い、「見守り」を続けた家庭の末路

D君は高1の1学期から不登校になって、ご両親が当会に相談に来ました。6月から当会に通い始めましたが、すぐに来なくなりました。

そこで、家庭訪問支援をしたほうがいいと私から説明しましたが、ご両親は「うちは見守ります。子どもの意思を尊重したいから」と断りました。

それから6年、22歳になった今も、ひきこもったままです。

寝たいときに寝て、起きたいときだけ起きて、お供えのように3食を食べて、ゲーム三昧です。ご両親は家業をしているので、手伝いなどさせればいいのですが、それもやらせないで、ひきこもりの生活を続けさせています。

不登校・ひきこもりを支援しているさまざまな機関、さまざまな団体がありますが、一定数の人たちが言うのが、「見守りましょう」です。

お察しのとおり、見守るほうが楽なのです。拒否反応もありませんから。

しかし、私に言わせると、それは「放置」で、ひきこもりの長期化を助長していると言わざるを得ません。

「見守る」というのは、宗教に近いものがあります。

ある宗教から別の宗教に改宗するのが難しいように、一度「見守る」派のカウンセリングなどを受けて信じてしまうと、なかなか考えが変わりません。すると、ひきこもりが何年にもわたって長期化してしまうのです。

「見守る」派の機関では、見守っているだけなので、不登校やひきこもりから立ち直らせた実績がありません。ノウハウがないのです。

今から15年くらい前までは、ネット社会ではありませんでしたから、家にひきこもっているのに飽きて、外に出始める子もいました。実際に私も、家にいるのが飽きたから高校を再受験するという子を多く指導してきました。

しかし、iPhoneが登場したのに象徴されるように、15年くらい前からは、ネット、スマホがあって、家にいても楽しく過ごせるようになりました。すると、外に出ようという気にならないのです。

ひきこもりになるリスクを考えて不登校のケアをするのならいいですが、リスクを考えずに「見守っていましょう」というのは危険です。少なくともはっきりとした期限を決めるべきでしょう。

特に自治体の相談機関や学校は「見守りましょう」の傾向があります。ひきこもっているから相談に来ているのに、「子どもが来てくれないと対応できません」と言われることもあります。来られないから相談に来ているのに、まったく解決できないのです。