「生ける屍」のようになってしまった
最近はそういった強力な注射があるのです。それによって彼女のLDLコレステロール値は46mg/dlにまで下がってしまいました(基準値は70〜140mg/dl)。
医者は「下げすぎたって、全然害はないから」と言って相手にしなかったそうです。
彼女がどうなったか。どんどんうつっぽくなって、元気がなくなってしまったのです。
「LDLコレステロール値を健康のために下げましょう」というのは、百歩譲ってありとしましょう。しかし問題はそこからです。下げすぎの害がどれだけあるか、現実を知らない医者がいることに、驚きです。
たとえばLDLコレステロールというものは、女性ホルモンの材料です。
これがあまりにも減ってしまえば、肌つやが悪くなったり、骨粗しょう症になりやすくなったりします。
原発性骨粗しょう症は、女性ホルモンであるエストロゲンの減少によって、骨量(骨密度)が減少して、スポンジのような海綿骨という骨の中の空洞が増えることによって起こります(一方、続発性骨粗しょう症は、特定の疾病や薬剤の影響によって二次的に起こります)。
がんや感染症を引き起こす
しかも、LDLコレステロールには、脳にセロトニンという神経伝達物質を運ぶ働きがあります。すき焼きとか、美味しいお肉を食べていると、ハッピーな気分になることが多いですよね。実は、その理由のひとつは、セロトニンが脳に届くからと言われています。
そしてLDLコレステロールは、免疫細胞の材料でもあるのです。
要するに、LDLコレステロールは高すぎるのも問題ですが、総じて低い人より高めの人の方が免疫機能も高く元気で、ホルモン効果で肌つやもよく、うつにもなりにくい。
どちらを取るかというのがこれからの医療で大事なところで、そこには議論の余地があると思います。日本での(世界的にもそうですが)医学調査では、高めの人の方が死亡率が低いこともわかっています。
少なくとも下げすぎることのデメリットは、知っておいていただきたい。
免疫機能の低下は、がんや感染症を引き起こしやすくなりますから。
先に述べた通り、高齢者は、血糖値も血圧も高い人の方が一般に元気です。
諏訪中央病院名誉院長の鎌田實先生も、高齢者(65歳以上)には、コレステロール値を下げる薬を出すのを基本的にやめる方向で診ているそうです。