米Appleが生成AIの機能を搭載した新型スマホ「iPhone 16」の発売を開始した。立教大学ビジネススクールの田中道昭教授は「スマホ市場の成熟化が進み、iPhoneの売り上げは伸び悩んでいる。しかし、Appleがそれでも高い時価総額を維持する背景には、スマホを中心とする巨大なエコシステムの形成に成功したからだ」という――。
2024年9月9日、アップル本社で発表会を終えた新型iPhone 16の展示機。
写真提供=DPA/共同通信イメージズ
2024年9月9日、アップル本社で発表会を終えた新型iPhone 16の展示機。

米国メディアは「新型iPhone」をどう報じたか

iPhone 16/16 Plus(以下、iPhone 16)が2024年9月20日に発売開始となった。

今回のiPhone 16は、Apple独自の生成AI「Apple Intelligence(アップルインテリジェンス)」に対応した機種である。音声の文字起こしやメール内容の要約のほか、音声アシスタント「Siri」の機能が大幅に向上し、言い間違いやあいまいな表現にも対応するという。Googleが「AIスマホ」を打ち出したGoogle Pixel 9で気勢を上げる中、AppleもAI対応で追随した形だ。

※Apple Intelligenceは、アメリカでは2024年中に提供、日本では2025年に提供予定

このiPhone 16に対して、アメリカメディアの見方は楽観論・悲観論が入り混じる展開となっている。これまで新機種発売のたびに大きな話題となり、Appleの業績を支えてきたiPhoneに、なぜ悲観論が出てくるのか。

主な理由としては、「スマートフォン市場の成熟」が挙げられる。チップの進化とメーカー各社の商品開発における努力の成果によって、数世代前の機種であってもそれなりに実用に耐えるため、買い替え需要が起こりにくくなっているのだ。

以前ほどの「爆発的な売り上げ」は期待できないが…

Appleであっても、新機種の開発は漸進的なものにすぎない状況だ。その結果、多くの消費者は、現在使っているスマホが壊れたり、紛失したりした場合に、やっと新しい端末を購入するという傾向がある。アメリカのテクノロジー調査会社の消費者調査によれば、「最新の機能を利用するために新しいスマホを購入する」と回答したのは、全体のわずか5分の1だという。また同社は、スマホの新機種購入について「衣類乾燥機やランニングシューズを交換するようなもの」だと評している。

過去、iPhoneの売り上げは画期的な新機種の登場によって牽引されてきた。たとえば2010年に発売されたiPhone 4は、前面カメラと超高解像度のRetinaディスプレイを搭載した機種だったが、この発売によりiPhoneの売り上げは前年比約90%まで伸びた。同様に2014年に発売されたiPhone 6/6 Plusは画面を大型化し、iPhoneの売上高を前年比約50%増に押し上げた。

しかしiPhone 12が発売された2021年からiPhoneの売り上げは前年比で微増または微減となっており、今回のiPhone 16の発売によるiPhoneの売り上げ伸び率は7.5%に留まるとアナリストが予想している