完璧主義者ほどパニックになりやすい

実はこういうケースは、どこの会社にも一定数あります。この事例のようにパニックを起こすまでには至っていないものの、着信音に過敏に反応したり、ドキドキしたりする人は珍しくありません。

この現象はまだ仕事に慣れていない新人に多く見られます。本来、新人であれば、仕事で使う専門用語や単語などわからなくて当然ですから、電話でいきなり言われても一度で理解できないことがあるでしょう。あわてずに聞き直すか、わからなければいったん電話を切ってかけ直すなど、いくらでも方法はあるのですが、それができないのです。

なお、この例のようにパニックになるまでエスカレートするのは、完璧主義の人に多い傾向があります。「全部覚えていなければいけない」とか「100%理解しなければいけない」と決めつけていると、「これもできない」「ここも足りない」とミスばかりにフォーカスして、歯車が逆回転するように悪循環が始まってしまいます。

若者にとって電話機は「未知の機械」

ケース3 電話に出ることを強要されて出社拒否

ある会社では、「新人は電話に出る」「3回コール以内に出る」という暗黙の了解がありました。今、これを強要すると、ハラスメントになってしまう可能性もありますが、古い体質の会社だとまだ社内風土として、残っているところもあるようです。

新入社員で入社した社員は、家に固定電話がなく、受話器を取って応答する電話機に慣れていなかったそうです。

電話機のダイヤルを押す手
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上司は「電話くらい出られるだろう」と軽く考えていたのですが、その方にとって電話機は初めて使う未知の機械でした。出たことがないから、受話器を取るのがこわい。携帯電話でしか話したことがないので、職場のような人前で、固定電話を使って話す行為にためらいを感じてしまう。しかし新人はぜったいに電話に出なければいけません。

「おい、鳴ってるぞ」と上司から言われ、受話器を取って、しどろもどろで話していると、「電話くらいちゃんと出られるようにしろよ」とまた叱責されます。そのうち電話に出るのがこわくなり、会社に向かおうとすると、お腹が痛くなったり、電車の中で激しく動悸がしたりするようになったそうです。結局、出社できなくなり、相談に来たケースです。固定電話を使ったことがない若い社員に多い事例といえましょう。