ちょっとした質問すらできない

なお給湯室からZoomにつないできた社員のエピソードにはつづきがあります。

給湯室に人が来ないか気にしている様子だったので、「落ち着いてお話ができる会議室かどこかに移動されたらどうですか? 私のほうは時間は大丈夫ですので」と提案すると、その方は「会議室の取り方がわからないので」と即答でした。

私はその会社を訪問したことがありますが、一人でも使用できる会議室がじゅうぶんにあり、会議室の取り方など、隣の席に座っている人に聞けば、すぐに教えてもらえるはずです。でも、「会議室の取り方を教えてください」という簡単なひと言がかけられない。苦肉の策で探したのが給湯室だった、というわけです。

会議室の取り方を聞くというこんな簡単なことでも、人に聞いたり、頼んだりすることができない。これは何もこの社員に限ったことではありません。今の若い世代に比較的多い傾向│というかむしろよくあるケースだと理解しておく必要があります。

疑問符のカンバンを顔の前に掲げるビジネスパーソンたち
写真=iStock.com/Jacob Wackerhausen
※写真はイメージです

電話に出ると頭が真っ白になってしまう

ケース2 電話の着信音が鳴るだけで動悸がする

二つ目のケースは電話の着信音が鳴るだけで、動悸がしてパニックになってしまう社員の例です。

その会社では現場の職人さんとのやりとりが多く、「おまえ」「馬鹿やろう」など乱暴な言葉づかいが頻繁に飛び交うことがあったそうです。そのため、その社員はもともと電話に苦手意識があったようですが、加えて、業界独特の専門用語などもよく聞き取れず、電話の内容を正確に把握できないことがありました。

当然、上司からは「何をやってるんだ」と注意されるので、着信音が鳴ると、緊張します。そのあまり、頭がまっ白になり、電話中も相手の話がすべて飛んでしまうそうです。すると悪循環で、さらに、話の内容がわからなくなり、場に即した応対ができません。

またそこで怒られて、電話に出るのがこわくなり、次の電話も緊張する。そのくり返しで、とうとう電話が鳴っただけで、動悸が激しくなって、冷や汗が流れ、受話器を取ることができなくなったという事例です。