冒頭の問い「地球は何歳か知っていますか?」の返答に窮する我々に、「私も同じでした」と笑う。
こうした自らの気づきと娘の自宅教育を通じ、各科目をつながりで考える勉強の必要性を感じたロイド氏は、各国を歴訪する間、政治や科学、歴史、テクノロジー……、それらの点と点を結んでくれるような本を探したが、どこにもなかった。ならば、この手で書こう、と本の執筆を思い立った。
「まずは自然史、それから人類史を書いて、その後融合させましたが、そうすると人の暮らしが、いかに自然の影響を受けてきたかということがわかってきました。結果、人と自然の歴史を大局的に見るという本に仕上がったわけですが、これも複数の科目を横断して学ぶことが自分なりの旅になるのだという経験があったからこそ。あの経験がなければ、とても思い浮かびませんでした」
当初1年だけのつもりの自宅教育は結局、5年間続いた。学ぶことの楽しさを知った子供たちは、その後小規模な学校に学びの場を移した。「自宅教育は、すべての家庭で行えるわけではありませんが、わが家の場合、あのときはあれが一番正解でした。子供と一緒に時間を過ごし、共に学ぶことで、親子の関係がもっと強くなります。一番大切なのは、最初の一歩を踏み出すことです」
ロイド氏は子供と共に学ぶ親には辛抱強さが必要と言う。
「時間割や試験など物事をカチカチに決めていると、辛抱強さどころか、逆にイライラしてしまいます。それらをすべて放り出し、子供の言うことに耳を傾けて、自分なりの旅ができるように見守ってあげる。待ってあげる。そして自分でできる権限を与えてあげることも大切です。私が娘と経験を共有したように、この本で世界を大局的に見るという経験を、家族全員で共有してもらえたら嬉しいです」
(構成=高田純子 撮影=若杉憲司)