TOPIC-1 女性の20・30・40代論
連載第3テーマでは「年代本」、つまり20・30・40代それぞれにおいてなすべきことを論じる書籍を扱いました。しかし、そこで対象とした書籍は男性の手による、主に男性に向けられたものばかりだったため、私は一つの「宿題」を抱えることになりました。
それは「女性の生き方」についてです。男性向け「年代本」では家庭生活への言及もあるのですが、パートナーの生き方について触れられることはほぼありませんでした。つまり「年代本」において女性は、あくまでも男性が貫こうとするライフスタイルの相談相手、男性を支える存在であって、彼女がどんな人生を歩みたいと考えているのか、そこに焦点があてられることはないのです。
私がもう少し考えてみたいのは、いかに自己啓発書が男性中心的な考え方をしているか、ということではなく(それはおそらく分かり切ったことです)、逆に女性向け自己啓発書において「女性の生き方」はどのように論じられ、また女性の側から男性がどのように論じられているかということです。これが今回のテーマです。
このテーマの対象書籍として最適なのは、女性向けの「年代本」です。しかし図1のように、「女性が20代でしておくべきこと」というような書籍が多く刊行されたのは1980年代から1990年代前半でした。「年代本」は2010年代に99冊(抽出基準は下記説明※を参照)刊行されているのにもかかわらず、そのうち明らかに女性向けといえる書籍はたった4冊に過ぎません。ここまで資料の数が少ないと、比較対象として適切とはいえません。
しかし、図1からいえることもあると思います。それは、2010年代の「年代本」ブームは、基本的に男性による、男性のための書籍を中心としていたということです。もちろん性別を特定しない「年代本」も多くありますが、それとて千田琢哉さんや井上裕之さんなど、発信者は男性の書き手でほぼ占められています。こうした「年代本」が概して男性目線のものであることは先に述べたとおりです。