コンサルタントにいきなり答えを聞くのは大間違い

さて、ここまでいろいろと話をしてきて、最後にそれらを一気にひっくり返してしまうようなことをお話ししようと思う。

よく、コンサルティングをしていると、企業の担当者から、「そうは言っても、堀さんはすでに答えを知っているんでしょう? もったいぶらないで教えて下さいよ」と言われることがある。

津田久資『本物のコンサルを選ぶ技術』(クロスメディア・パブリッシング)
津田久資『本物のコンサルを選ぶ技術』(クロスメディア・パブリッシング)

しかし、この質問にはコンサルティングに対する大いなる誤解がある。

コンサルタントにいきなり答えを聞くのは間違っている。なぜならコンサルタントの一番の仕事とは、前にも話したように「何が問題か、問題はどこにあるか」を探すことだからだ。

その問題点がはっきりしていない段階で、いきなり答えを求められても困るのである。

ただ、正直な話をすると、私自身は依頼を受けてからクライアントに会いに行くまでに、すでに会社のどこに、どんな問題があるかについて、「仮説」を立てていることもある。

この「結論仮説」については、本書でもう少し詳しく解説しているが、コンサルティングの経験を積む中で、依頼を受けた段階で自然に結論仮説が自分の中に沸き起こってくるようになった。

ただし、いきなりそれをクライアントに開示することはない。まずはその結論仮説を検証するべく、情報収集を行う。その中で仮説が正しいと考えられるときもあれば、全く違っていることもある。

“正解”がわかっていても教えない

大事なのは、あくまでもクライアントと一緒になって問題点を探り、見つけ出すという姿勢を貫くことだ。

最上のコンサルティングは、あたかもクライアント自身が自分の力で問題を発見し、解決策を導いたように思わせることだと考える。

だからこそ、私はどんなに自分の中で結論仮説があってそれを確信していても、それを最初からは提示しないのである。

質のよいコンサルティングは「答え」をいきなり教えてくれるのではなく、まずは「考え方」を教えてくれるものである。コンサルタントを雇おうと考える企業も人も、ぜひそのことを頭に入れておいてほしい。

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