大切なのは「深いノンレム睡眠」を取る習慣を作ること
ノンレム睡眠とレム睡眠の組み合わせを1つの周期とすると、通常、一晩寝ているときに、この周期を4〜5回繰り返します。ただし、ノンレム睡眠は起床に近づくにつれてだんだん浅くなるので、もっとも深いノンレム睡眠が出るのは1回目のサイクルなのです。
若い人ならば、深いノンレム睡眠が2回現れることもありますが、年齢を重ねていくと、眠りが全体的に浅くなります。
大切なのは、寝る時間帯よりも、きちんとした睡眠習慣をつくって、最初の睡眠サイクルでしっかり深いノンレム睡眠をとること。あまりに寝る時間帯にこだわるのは、睡眠に悪影響を及ぼしかねません。
子どもだけでなく、大人の健康と美をサポートする成長ホルモンですが、いくら最初の深い睡眠時に多く分泌するといっても体内のリズムが整っていることが大前提です。ある日は早く寝て、次の日は夜更かしでは、体内のリズムが乱れて、成長ホルモンが思うように分泌しないことも心に留めておきましょう。
昼夜を問わず「強い光」に囲まれている現代社会
「眠りの質を高めたい」と考える方も多いでしょう。睡眠の質は、夕食以降に浴びる光の量に大きく左右されます。
私たちの体には、1日のリズムを生み出す仕組みである「体内時計」が備わっています。個人差もありますが、体内時計の平均的な周期は24時間10分ぐらいです。
体内時計には、脳の松果体という器官で分泌される「メラトニン」という(調整因子の)ホルモンが関係しています。メラトニンそのものに直接睡眠をコントロールする力はありませんが、分泌によって体内時計に働きかける結果、私たちの体を眠りに誘っています。
メラトニンは、とりわけ目から入る光によって分泌量が変わります。具体的には、光の多い昼間にはメラトニンの分泌量は少なく、光の少ない夜になると徐々に増えていくのです。実際に、メラトニンは睡眠中に分泌され、血中濃度がどんどん高くなります。
そもそも人間は、大昔から昼間に活動して、夜は睡眠をとる、昼行性の生き物です。
ところが現代社会ではどうでしょう?
夜でも街灯や蛍光灯がついていますし、スマートフォン(以下、スマホ)やパソコンのブルーライトが身近にあるなど、私たちは強い光に囲まれています。目から入る光は体内時計に間違った時刻情報を伝えることになるので、日が暮れても光を浴び続けることで「視交叉上核」にあるマスタークロックに影響を与えてしまいます。